• 第90の皿 炊事研究家が作る大根の煮物

    新たな仲間を加えた「CopyPe」の新装を機に、炊事研究家を名乗ることにした。

    世界的な検索サイトに聞いたところ、「そんな奴ぁいない」とのことだったので、

    もしかしたら「我が国初の」かもしれない。

    名乗った者勝ちである(名乗りたかった人がいればだが)。

     

    そもそも、耳なじみのある「料理研究家」自体、資格不問の肩書きなので、

    「コピーライター」と同様に、名乗ろうと思えば勝手に名乗ることは可能。

    だが、揚げ物ができない、魚も捌けないなど、調理のスキルが著しく低いので、

    プロの諸先生方と同じ肩書きを騙るのは、やはり犯罪レベルだろう。

     

    自分にとって料理は、あくまでも家事。

    ゆえに、お菓子やおもてなし料理など、見映えのするものは作らない(作れない)。

    晩ごはんとお弁当のおかずと、休日に食べる麺類の調理しかできないのだから、

    研究課題は三食のための料理、すなわち「炊事」だよなあ、と気が付いたのだ。

     

     

     

    大根の煮物

     

    大根 1/2本(皮をむいて輪切り)

     

    水 200cc

    みりん 大さじ1

    白だし 大さじ1

    和風だしの素(顆粒) 適宜

     

     

    (1)水と調味料を入れた鍋に大根を並べ、ふたをして中~弱火で30分煮る。

     

     

    大根は、もちろん油で焼いてから煮たものも格別だが、

    その一手間がなくても十分においしい。

    特に、暑くて食欲が落ちることもある夏は、

    冷たいままでもあっさりと食べられるメニューがうれしい。

     

    「CopyPe」リニューアルの恩恵を受けた本コラムでは、

    素晴らしいカバーデザイン(深く感謝!)にちなんで、

    ペンネームも「こめじるし」と改めることにした。

    「米」と「汁」が見え隠れする、炊事研究家らしい名前である。

     

     

  • 第89の皿 国民的アニメと海の幸サラダ

    国民的アニメ『サザエさん』の新しい番組スポンサーの決定が報じられた。
    インターネット通販企業、ベビー用品専門チェーン、
    建売住宅メーカーの3社とのこと
    (その後、メインスポンサーとして大手自動車メーカーが参入との報道も)。

     

    この番組と言えば、長らく一社提供してきた大手家電メーカーの印象が強い。
    もう随分前から複数企業による提供に移行してはいたが、
    完全撤退となると、感慨もひとしおである。
    もう何十年も見ていない番組であったにしても。

     

    原作が戦前から高度成長期にかけて新聞連載されたものだから、
    描かれる世界は昭和そのもの。
    平屋の一戸建てに住み、肉屋や魚屋、酒屋などで買い物をして、
    居間にあるちゃぶ台を囲み、一家揃って夕食をいただく。

     

    そんな、古きよき昭和の暮らしぶりを、
    ネットショッピングのガリバー企業が支えるミスマッチ感。
    今、ひそかに注目を集めているのが、
    主題歌の変更があるかどうかである。

     

    買い物するのに街まで 出掛けない
    財布を持たずに ポチッとサザエさん

     

    これでは、ストーリーが転がっていく気がしない。

     

    海の幸サラダ

     

    刺身各種(まぐろ、かつお、甘えび、いくらなど)
    海藻各種(わかめ、ふのり、白きくらげ、めかぶ、とさかのり、寒天など)
    かにかまぼこ
    とびっこ

     

    アボカド
    貝割れ菜
    ミニトマト

     

    〈ドレッシング〉
    ぽん酢しょうゆ
    オリーブオイル
    ドライバジル
    黒こしょう

     

    1. 食材を食べやすいサイズに刻んで、ドレッシングで和える。

     

    分量はすべて適宜の、シーフードサラダ。
    主要キャラクターの名前がすべて海産物にちなむ
    国民的アニメをオマージュした一皿である。
    彩りが実にカラフルで、まさに海の幸。

     

    番組の新スポンサー候補の中に、個性的な院長が率いる
    美容外科クリニックがあったが、惜しくも落選してしまったようだ。
    しかし、カツオやサザエらが、診療科目にまつわる悩みを解消すべく
    通院を決意するストーリーは、あまり想像したくない。

     

  • 第88の皿 ホットな1年を、カレー・ヴルスト

    今年は、戌年。
    イヌと聞いて思い出される食べ物は、やっぱりホットドッグであろう。
    この名前、フランクフルトソーセージをダックスフントに見立てて
    「ホットドッグ」と説明を添えた新聞漫画から広まったという説がある。

     

    この形状が生まれたきっかけは、ソーセージ屋の機転による。
    熱々のソーセージをつかめるようにと貸した手袋を、
    客がそのまま持ち去ってしまうことに悩んだ売り子が、
    パンに挟んで提供することを思いついたのだとか。

     

    パンと肉という好物同士の組み合わせとファストさが愛されて、
    たちまちアメリカの国民食となり、年間消費量は1人当たり約60食も。
    野球観戦との相性がことさらによく、
    各地の野球場に名物ドッグが誕生している。

     

    カレー・ヴルスト

     

    ロールパン 1個
    ソーセージ 小2本
    キャベツ 少々(千切り)
    ケチャップ 少々
    カレー粉 少々

     

    1. キャベツを焼き、切り込みを入れたロールパンに挟む。
    2. ソーセージを焼き、ケチャップとカレー粉で和え、ロールパンに挟む。

     

    その伝説のソーセージの売り子は、ドイツ移民だったと伝えられている。
    そこで、焼いたソーセージの上にカレー粉とケチャップをまぶした、
    ドイツの屋台料理「カレー・ヴルスト」をホットドッグに仕立ててみた。
    炒めたキャベツも挟んだ、昭和の喫茶店風である。

     

    ホットドッグという言葉は、アメリカでは
    驚きや喜びを表す感嘆詞や、有能な人材、
    あるいは目立ちたがり屋のたとえでもあるのだとか。
    楽しい1年になりますように、願いを込めてかぶりついた。

     

  • 第87の皿 そこが議論のタネ、焼き餃子

    友人知人が集まって、餃子パーティーを開いたとしたら。
    一見、楽しそうだが、やがてそれぞれが好きな調理法を主張しだして、
    侃々諤々、意見百出で、確実に紛糾しそうだ。
    白熱の討議の様子を、ちょっと覗いてみよう。

     

    まず、キャベツか白菜かで2大勢力に色分けされて、
    にんにくを入れる入れない問題で、それぞれがさらに分派。
    ところで、青菜はねぎ、それとも、にら?
    しいたけやたけのこを刻んで入れたい?
    え、叩いた海老を混ぜちゃうの?
    焼くならやっぱり羽根付きがいいよねえ?
    なに、水餃子? いやいや、蒸し餃子?
    たれはどうするの? ラー油じゃなくて、ぽん酢?

     

    結局、バリエーションが多すぎるのだ。
    万一、入れる具材や調理法、たれに至るまで、
    まったく同じ好みの持ち主が現れたら、それはきっと、運命の人。
    もしくは、単に同じ屋根の下で暮らしてきた家族である。

     

    「餃子は、自分の家で作るのがいちばん」というセリフを、
    どこかのマンガで見た記憶があるが、その通りと思う。
    もし、具材から調理まで自分好みのものが注文できる
    餃子店がオープンしたら、大繁盛しそうな気がする。

     

    焼き餃子

     

    餃子の皮 40枚

     

    〈あん〉※皮40枚分の量
    豚ひき肉 300g
    白菜 1/16切(みじん切り)
    わけぎ 1束(みじん切り)
    しいたけ 1/2パック(みじん切り)
    たけのこ水煮・細切り 1/2パック(みじん切り)

     

    〈あんの調味料〉
    酒大さじ1/鶏ガラスープの素小さじ1/おろししょうが小さじ1/
    塩少々/こしょう少々/ごま油小さじ2/片栗粉大さじ1.5/しょうゆ大さじ0.5

     

    〈羽根付きの素=A〉
    熱湯100cc/薄力粉大さじ1

     

    しょうゆ・ラー油 少々

     

    1. 刻んだ白菜とわけぎと塩少々(分量外)をボウルに入れ、しばらく置いてから水気を絞る。
    2. ボウルに1と残りの食材、調味料を入れ、粘りが出るまでこね、しばらく寝かせてから、あんを皮で包む。
    3. フライパンに油(分量外)を薄く引いてから餃子を並べ、Aを鍋の底が薄く浸る程度まで、餃子に掛からないように静かに注ぎ、ふたをして弱火で10分ほど蒸し焼きにする。
    4. ふたを開け、中火で加熱して水分を飛ばし、焼き色を付ける。
    5. 焼き目を上にして皿に載せる。しょうゆとラー油でいただく。

     

    ご覧の通り、我が家は、焼き餃子一択である。
    にんにくやにらなどの刺激物を排除した、割とマイルドなタイプ。
    野菜は白菜がベースで、しいたけとたけのこを刻んで入れる。
    このやり方でしか作れないので、餃子パーティーの参加は辞退したい。

     

  • 第86の皿 腹が鳴り続ける、ワンタン入り野菜スープ

    人は皆、腹時計という、制御出来ない不自由な時計を持っている。
    空いたおなかが「グー」と鳴り、食事どきの訪れを訴えるのだ。
    ところが、おなかが鳴った時が、常に食事できる時間とは限らない。
    たいがいは、鳴り続けるおなかを抱えながら、食事時間を待つことになる。

     

    こうして考えると、おなかが鳴った瞬間に食事することができたら、
    この上なく幸せなことだろうと思う。
    自分で料理を作る場合は、空腹を感じる前から調理を始め、
    できた料理の香りを嗅いだ瞬間におなかが鳴るのが理想的だ。

     

    ワンタン入り野菜スープ(10人前)

     

    白菜 1/4把(ざく切り)
    もやし 1袋
    にんじん 1本(短冊切り)
    しいたけ 1パック(細切り)
    きくらげ 少々(熱湯で戻して細切り)
    春雨 1袋(100g)(熱湯で戻す)

     

    オリーブオイル 大さじ1

     

    〈スープ〉
    水 2500cc
    鶏ガラスープの素 大さじ4
    しょうゆ 大さじ4
    酒 大さじ3
    おろししょうが 小さじ1
    こしょう 少々
    ごま油 大さじ1
    片栗粉 大さじ1(水で溶く)

     

    〈ワンタン〉
    ワンタンの皮 30枚
    豚ひき肉 250g
    片栗粉 大さじ1
    おろししょうが 小さじ1
    塩 少々
    しょうゆ 小さじ2

     

    1. フライパンにオリーブオイルを引き、にんじん、しいたけ、白菜、もやしを軽く炒める。
    2. 鍋に水と調味料を入れて味を調えて、ふたをして中火〜とろ火で1時間煮込む。さらにきくらげと春雨を加えて少々煮る。
    3. その日食べる分のワンタンの皮を取り分け、肉だねを包んで鍋に入れ、肉に火が通るまで温める。

     

    たっぷりな量が出来るが、このレシピは
    2人暮らしの我が家の夕食1週間(5回)分用である。
    平日の夜にワンタンを手早く作るコツは、練った肉だねを5つに分け、
    この日は食べない4玉をラップで個包装して、冷蔵保存することだ。

     

    翌日、チルド室から1回分を取り出して、ワンタンの皮を6枚置き、
    6等分した肉だねを1枚ずつ包んで、温めなおす鍋に放り込むだけ。
    肉だねを包んでいたラップを調理台代わりにするから、
    余計な洗い物を増やさずに済むのも平日向きだ。

     

    ワンタンと具だくさんの野菜が入った中華スープの香りは
    「立ちのぼる」という表現がピッタリで、猛然と食欲を刺激する。
    季節は、まさに食欲の秋。
    おなかの中も常に「あき(空き)」で、鳴りっぱなしである。