• 第98の皿 健康のためなら、夏のお吸い物

    「健康のためなら死んでもいい!」
    というフレーズを叫んでいたのは、昔の所ジョージさんだったが、
    矛盾するほど過剰に求めてしまいがちなのが、健康である。
    若い頃はさほど思ってはいなかったが、やはり健康は大切だ。

     

    スポーツ紙を毎日愛読するほどのスポーツマンな私だが、
    汗をかくのは大嫌いなインドア派。
    さりとて、サプリメントを毎日きちっと飲み続ける根気も持ち合わせておらず、
    健康についての備えは、非常に心もとない。

     

    このため、食生活だけでなんとか健康を維持できないかを、
    常日頃から考えてやまない。
    この思考こそが不健康な気もするが、
    他に頼るものがないのだから仕方がない。

     

    どうせなら、好きなものを食べて健康になるのがベスト。
    しかも簡単に作れて、暑い夏にぴったりの冷たいものなら、なおうれしい。
    夏に冷たいものという発想もまた不健康だが、この際それは目をつぶる。
    栄養価の高いものを、しかも何品目も同時に摂れれば、理想的である。

     

    夏のお吸い物

     

    生めかぶ 2パック
    生もずく 2パック
    生わかめ 1つかみ(刻む)
    おくら 20本(小口切り)
    なめこ 1〜2袋
    えのきだけ 2〜3袋(軸を落とし、乾煎りして水分を飛ばす=ぬめりが出るまで炒める)
    水 1800cc
    白だし 大さじ8
    酒 大さじ2
    みりん 大さじ2

     

    1. 鍋に水と調味料、具材を加えて、あくをすくいながら温める。

    2. 冷めたら冷蔵庫へ入れる。数時間後に飲む際は、器に注いですぐに冷蔵庫へ入れる。

     

    ぬめり食材だけを集めて、冷製お吸い物を作ってみた。
    ローカロリー・ローコレステロールで、食物繊維が豊富。
    血液の凝固を防ぎ、生活習慣病予防、脳細胞の活性化、
    免疫力の向上、デトックス効果などなど。

     

    フコダインやペクチン、セルロースといった、
    多くの素材から溢れ出る「ぬめり」成分は、
    栄養も清涼感も満点。
    夏のみならず、1年中でも取りたい健康スープである。


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  • 第97の皿 令和の梅ジャム

    2つの時代をまたいだ10連休が、国を挙げて施行された。
    このスーパーゴールデンウイークで痛感したのは自身が
    「まとまった時間が出来ても、特に何もしないタイプ」
    だったと改めて気付かされたことである。

     

    10日間で、外出は隣町への散歩2回のみ。
    見事なまでに「通常の土日×5回分」として淡々と使い切った。
    決して遠くない老後が思いやられる暮らしぶりに、
    生活のメリハリを形作っている「労働」のありがたさを思う10日間だった。

     

    そんな休暇の中、最低限の行動目標がたったひとつあった。
    それは「以前に漬けた梅酒のびんを1つ空けること」。
    5月と言えば、翌月には梅酒の仕込み時期。
    平常では面倒な作業を成し遂げられる、絶好のチャンスだったのだ。

     

    具体的には。梅酒のびんを空けたあとで残る梅の実を、ジャムに加工する作業である。
    10連休にはうってつけ、というか、普段の週末ではとても手に負えない。
    ここでやらずして何時やるか、というなかなかの苦行だ。
    連休中でも「明日やろう」と先延ばし続け、連休終わりに近付いた日にようやく着手した。

     

     

    梅ジャム

     

    梅の実 1kg分

    レモン果汁 大さじ1
    砂糖 100g

     

    1. 梅の実とひたひたの水を鍋で煮て〈沸騰後、中火10分〉、冷ましてから種を取る。

    2. レモン果汁と砂糖を加え中火〜とろ火に落として10分、とろとろになるまで煮込む。

    3. 火を止めて自然冷却して容器に移す。

     

     

    新元号「令和」の出典は、「万葉集」の「梅花の歌 三十二首」の序文とか。
    ジャムにした梅は、7年前の平成24年に仕込んだ梅酒の梅。
    工程1で出た煮汁は、飲めば十分酔っぱらえる「梅酒茶」となる。
    令(よ)き梅の香りで、和(やわら)ぎを楽しもう。

  • 第96の皿 平成の終わりに、鶏つくね

    何を隠そう、社会人デビューが平成のスタートと重なっている。
    入社試験を受けたときはまだ昭和だったのだが、
    春を待つうちに、元号が切り替わったのだ。
    数えなくても勤続年数がわかるのは、すごく便利だった。

     

    TVなどで繰り返される平成史は、大きな災害や事件、
    ときおり快挙など、実にさまざまな出来事に彩られている。
    一方、自分史においては、さしたる起伏もなく歳月を重ねてきた。
    まさに「平らかに成る」身の上で、とてもありがたく思っている。

     

    新しい元号は「令和」と発表された。
    節目の年が、また元年になるのもありがたい。
    引き続きキャリアを積み上げ、一歩ずつ前へ進もう。
    今回は、残り少ない平成を惜しんで、この料理を。

     

    鶏つくね

     

    〈つくね〉
    鶏ひき肉 500gくらい(もも2:むね1がよい)
    やまいも 5cm程度(すりおろす)
    卵白 卵2個分
    塩 小さじ1/2
    酒 大さじ4
    水 大さじ4
    しょうゆ 大さじ1
    おろししょうが 小さじ1
    片栗粉 大さじ1
    白ごま 大さじ1

     

    〈たれ〉
    しょうゆ 大さじ2
    みりん 大さじ1
    酒 大さじ1
    砂糖 大さじ2

    卵黄 お好みで
    七味唐辛子 お好みで
    粉山椒 お好みで

     

     1. 〈つくね〉の材料をボウルで混ぜ合わせ、冷蔵庫で1時間寝かせる。

     2. スプーン大の1をフライパンで両面をじっくり焼き、取り出す。

     3. 〈たれ〉の調味料を火に掛け、1を戻して照りが出るまで煮からめる。

     

     

    平成の終わりにちなんで、
    「平(たい)らに成る」食べ物を選んでみた。
    肉だねがゆるめだから、混ぜるのも手を使わずにスプーンでOK。
    これを成形せずに焼くので、自然と平らな形になるのだ。

     

    人生2回目の元号変わりで、三つの時代を生きるわけだが、
    「明治・大正・昭和」を生き抜いた人の重厚感に比べると、
    「昭和・平成・令和」の三またぎは、何とも軽やか。
    貫禄も身に付くことなく、へらへらと世を渡って行けそうだ。

  • 第95の皿 シンプルな眼で、かきたまスープ

    「象を冷蔵庫に入れるために必要な3つの手順は?」
    なるクイズが流行した時期があった。
    答えは「冷蔵庫の扉を開ける→象を入れる→扉を閉める」で、
    まじめに象のサイズ感に悩んだ人を引っ掛けるものだ。

     

    この設問は、物事をシンプルに捉える大切さの教訓として、
    ビジネス現場で好んで語られてきた話題らしい。
    本物の象をいかに冷蔵庫に入れるかというソリューションに挑んだ精神は尊いが、
    求められる正解は「単なるマニュアルづくり」でよかったわけだ。

     

    このクイズには、続きがある。
    「では、キリンを冷蔵庫に入れるために必要な4つの手順は?」
    正解は、扉を開けたあとの手順に「象を冷蔵庫から出す」を加えること。
    それから、キリンを冷蔵庫に入れ、扉を閉めるのだ。

     

    思えば料理も、細かい手順の連続である。
    「冷蔵庫の扉を開ける」を1手順に数えるなら、
    完成品をひと皿を作るためには、
    いったい幾つの手順が必要になるだろうか。

     

    今回は、なるべく手順の少ないシンプルな料理を。
    もちろん「冷蔵庫の扉を開ける」からは始めないので、
    そこのところはひとつ各自で、
    行間を読んでいただくようお願いしたい。

     

     

    かきたまスープ

     

    卵 2個
    コンソメキューブ 2個
    水 1200cc
    黒こしょう 少々

     

    1. 小鍋に水とコンソメキューブを入れ、沸騰直前まで温める。

    2. 火を弱め、ボウルに溶いた卵を流し入れ、固まるまで温める。

    3. 器に注ぎ、黒こしょうを振る。

     

    料理の手順は、作ったらそれで終わりにはならず、
    「食べる→皿を洗う→皿を拭く→皿を棚に仕舞う」まで続く。
    本当は、ここに載せるための「写真を撮る」もあるのだが、
    「食べる」の途中まで、この手順を思い出せないこともしばしばである。

  • 第94の皿 ポジティブで行こう、納豆オムレツ

    けだるい朝に乗り込んだ電車が、特急の通過待ちのためにホームで待機。
    そこで、特急通過後に流れた車内アナウンスに感心した。
    「信号が変わり次第、発車いたします」というものだが、
    乗客がとても前向きに待てる言い方だと気付かされたのだ。

     

    よく聞かれるのは「信号が変わるまで、しばらくお待ちください」というアナウンスだが、
    この伝え方では、現在強いられている「待つ」という行為が信号が変わらない限り続く、
    という事実を再認識させられるだけで、無為に待たされる乗客にとっては、
    希望がまったく見いだせない現状だ。

     

    一方、前者では「信号はやがて変わる」という小さな希望が提示されていて、
    「その暁にはすぐに発車する」という約束までなされている。
    信号待ちという事実は同じでも、「変わり次第発車」はとてもポジティブで、
    「変わるまで待て」はひたすらネガティブである。

     

    コピーライターという人種は、いつもこんなことばかり考えている。
    逆説的に恐怖訴求、絶望感をあおるコピーもなくはないが、
    いつだって広告の基本はポジティブ。ポジティブは幸せを呼ぶ。
    今回は、ポジティブな食材がたくさん入った料理を。

     

     

    納豆オムレツ

     

    卵 6個
    小ねぎ 少々(みじん切り)
    海苔 1枚(細かくちぎる)

     

    納豆 1〜2パック(お好みで・写真は黒大豆納豆)

     

    しょうゆ 小さじ1
    白だし 小さじ1
    酒 大さじ1
    粉チーズ 大さじ1
    成分無調整豆乳 大さじ4(牛乳でも)
    こしょう 少々

     

    (1)ボウルに割り入れた卵と具材、調味料をすべて入れ、箸で混ぜる。

    (2)オリーブオイル(分量外)を引いて少し熱したフライパンに1を注ぎ込み、ふたをして弱火で8〜10分ほど熱する。

    (3)フライ返しを使って十字に4等分して1片ずつ裏返し、ふたをして弱火で5〜8分熱する。

     

     

    ポジティブな気分を高めるのは、脳内神経伝達物質「セロトニン」。
    しあわせホルモンとも言われ、抗うつ剤など心の病の治療薬にも、
    この物質を増やす働きが含まれているという。
    そんなセロトニンを作り出す栄養素が「トリプトファン」である。

     

    豆腐・納豆・みそ・しょうゆなどの大豆食品や、
    チーズ・牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、
    そして、バナナや卵などに豊富なトリプトファン。
    この栄養素をふんだんに使った料理のひとつが、納豆オムレツだ。

     

    今年は、亥年。
    前だけを見て突っ込んでいくイノシシに寄せて、
    ポジティブな1年になるよう、祈りを込めた。
    もう新年とは言い難い、1ヶ月遅れの思いである。