• 第75の皿 日の丸掲げて、チキンライス

    オフィスの目の前の道路は「国会通り」と呼ばれており、
    文字通り国会議事堂へと続いている。
    このため、海外の要人が来日するたびに、
    歓迎の意を表す国旗が街灯に掲げられる。

     

    ひと目見て国名が浮かぶ旗はほとんどなく、
    見たことはあるが国名は浮かばない国旗が3分の1、
    そして大部分が初めて見る、
    あるいは見た記憶がない国旗である。

     

    その日の晩のニュース番組か翌日の新聞で
    答え合わせをすることになるのだが、
    記事を見る頃には国旗の柄をすっかり忘れているので、
    国旗に関する知識は、一向に増えて行かない。

     

    チキンライス(2人前)

     

    ごはん 1合

     

    鶏もも肉 50g(1.5cm幅に切る)
    たまねぎ 1/2個(みじん切り)
    ピーマン 1個(みじん切り)
    ブラウンマッシュルーム 2個(スライス)

     

    オリーブオイル 大さじ1
    ケチャップ 大さじ4
    ウスターソース 大さじ1
    バジルパウダー 小さじ1/2
    チリパウダー 小さじ1/2
    白こしょう 少々
    ドライパセリ 少々

     

    1. 塩、こしょう(いずれも分量外)を振っておいた鶏もも肉を、オリーブオイルを引いたフライパンで炒め、一度取り出す。
    2. 野菜を炒めたら鶏肉を戻し、ケチャップ、ウスターソースを加えて具と絡め、さらにごはんを入れてなじむまで炒める。
    3. バジルパウダー、チリパウダーと白こしょうを振り、味を調える。器に盛り、ドライパセリを振り掛ける。

     

    旗といえば、何と言ってもお子様ランチ。
    カフェごはんよりはるか昔からある、
    元祖ワンプレートランチである。

     

    おかずはハンバーグ、付け合わせはスパゲッティ、
    そしてデザートまでセットになっているのが基本構成だったと思うが、
    やはり何と言っても、お子様ランチをお子様ランチたらしめているのは、
    チキンライスのてっぺんに、誇らしげに刺さった旗であろう。

     

    刺さっていてもいなくても、味にはまったく影響しないはずの旗だが、
    視覚的なおいしさの決め手になっていた。

     

    昭和の子どもにとって、お子様ランチを食べられる日は、
    間違いなく「ハレの日」。
    日の丸は、その祝祭の象徴だったのかもしれない。

     

  • 第74の皿 鉄分多めで、小松菜と油揚げの煮びたし

    この連載の第39の皿で「料理は、趣味とは思っていない」と書いた(料理は「家事」)。
    では「趣味は何か」と問われたら、自信を持って返す答えは、ない。
    趣味の枕詞として、よく「三度の飯より好きな」と表現されるが、
    正直な話、三度の飯より好きなものなど、ないのである。

     

    強いて挙げれば、鉄道はちょっと好きだ。
    小さいころ、家に「プラレール」というおもちゃがあった。
    鉄道が好きだからプラレールを買ってもらったのか、
    プラレールを買ってもらったから鉄道が好きになったのかは、わからない。

     

    しかし、鉄道好きの子どもが憧れる「運転」には、まったく興味がなかった。
    さりとて、電車のデザインにも興味は向かず、
    「乗り鉄」にも「撮り鉄」にも、ならなかった。

     

    興味を持ったのは、鉄道の「システム」だった。
    路線図マップや駅名表示板、電車の行き先が書かれた「方向幕」など。
    幼少時にいちばん好きだった駅の構造物は、

     

    こんどの電車は
    [(手前の駅名)]
    を出ました

     

    というホームの表示板。
    電車が近づくと[   ]にランプが点灯する。
    小さいマッチ箱と豆電球でこの表示板を手作りするほど、
    好きだったのである。

     

    小松菜と油揚げの煮びたし

     

    小松菜 1把(ざく切り)
    油揚げ 1枚(刻む)
    しめじ 1パック

     

    水 100cc
    和風だしの素(顆粒) スティック1本

     

    1. フライパンで刻んだ油揚げを軽く焼き目が付くまで熱しておく。
    2. 無水調理できる鍋に小松菜の茎を入れてその上に葉を載せ、しめじ、水とだしの素を入れ、ふたをして中〜弱火で10分煮る。

     

    小松菜の鉄分は、ほうれん草の2倍以上(ゆでた場合)。
    鉄分の吸収を助けるビタミンCも、ほうれん草を上回るとか。
    ほうれん草は、シュウ酸が含まれるためにアク抜きが必要で、ゆでると鉄分は減少する。
    アク抜きの必要のない小松菜は、下ごしらえが不要で、
    栄養も上回り、いいことずくめの食材である。

     

    今月の話題に合わせて、料理の方も”鉄分多め”でお届けしてみた。

     

  • 第73の皿 かりそめのカリスマ汁

    「カリスマ」が、街に溢れかえっている。
    ブロガー、美容師、シェフに主婦。
    バイヤー、講師、店員やモデル・・・。
    さまざまなジャンルに、数多のカリスマが存在する。

     

    いまやカリスマは、本来の意味合いを斜め下に飛び出して、
    「その業界でちょっとした人気者」なことを表す程度の、
    ずいぶんお手軽な言葉になってしまった。

     

    この風潮、何かに似ていると思ったら、「イケメン」が同じだった。
    そのジャンルに現れたちょっと見た目のよい青年を、
    すべて「イケメン」の一言で片付けるそれである。
    前述の職種や身分の枕詞としても、だいたい当てはまる点も同じだ。

     

    また、「カリスマ●●」とは呼びにくい職業の人だと、
    「●●界のカリスマ」と呼ばれるが、
    こちらにも似た構図があることを思い出した。
    昭和の時代には、ボディビル界や競艇界など、
    そのジャンルとしては(と言っては失礼だが)、
    少しキレイな女性が現れると、
    「●●界の百恵ちゃん」と呼ばれていたのである。

     

    「カリスマ」「イケメン」「百恵ちゃん」・・・。
    いずれにも共通する、微妙で残念な空気感。
    どの言葉もすべて、そう呼ぶ側が当人のことを心底からは
    “影響力がある””カッコいい””かわいい”
    などと思っていないのである。

     

    カリスマもイケメンも、呼ばれる側にとっては、
    ちょっとした罰ゲームな気がする。
    もはや「カリスマ呼ばわり」と言っていいレベルである。

     

    カリフラワーのコンソメスープ

     

    カリフラワー 2房
    青梗菜(ちんげんさい) 1把
    たまねぎ 1個
    ベーコンブロック 50g
    マッシュルーム 1パック

     

    コンソメの素 3個
    塩 少々
    こしょう 少々
    水 2000cc

     

    1. 適当なサイズに刻んだ、たまねぎ、ベーコン、マッシュルームを炒め、水を張った鍋に入れ、塩こしょうを振って、とろ火で1時間煮る。
    2. カリフラワーと青梗菜、コンソメの素を加え、15分煮る。

     

    カリフラワーのすまし汁、略して「カリすま」。
    カリスマブロガー呼ばわりすらされそうにない、
    極めて安易な一品である。

     

  • 第72の皿 ユニットのような冷やし中華

    具材をひと通り刻んで、冷やし中華が完成に近づく。
    だが、何か足りない。
    麺をゆで始める寸前に気が付いた。
    ハムだ。
    買っておいたハムを取り出すのを忘れていた。

     

    慌ててハムを刻んで、これで具材が揃った。
    きゅうり、卵、わかめ、もやし、ハム。
    これが我が家の冷やし中華の定番の具である。

     

    色も違う。味も違う。食感も違う。
    まったく個性の異なる5つの具材を眺めていると、
    アニメや特撮映画の戦隊ものを思い出す。
    基本は赤・青・緑・黄・ピンクあたりだったか。

     

    根っからの主人公気質で、情熱的な、赤。
    光的存在の赤に対し、陰として対のポジションに立つ、クーリッシュな存在の、青。
    善良で癒し系、近年では自然を愛するエコ野郎としてのキャラも負う、緑。
    カレー好きという大食漢キャラを背負わせられる三枚目カラーの、黄。
    男女雇用機会均等法の遵守をかろうじてアピールする、紅一点のピンク。
    5人編成が多かったような気がするが、
    キャラクターを色で表す手法は、画期的だったと思う。

     

    冷やし中華(2人前)

     

    生中華麺 2玉

     

    卵 2個(薄焼きにして刻む)
    きゅうり 1/2本(細切り)
    わかめ 1つかみ(刻む)
    ハム 50g(細切り)
    もやし 1/4袋

     

    熱湯 30cc
    鶏ガラスープの素 小さじ2(熱湯で溶く)
    顆粒の和風だし 5g(熱湯で溶く)
    砂糖 大さじ1(熱湯で溶く)
    黒酢 大さじ3
    しょうゆ 大さじ2
    酒 大さじ2
    ごま油 小さじ1(お好みでラー油でも)
    おろししょうが 小さじ1/2
    白ごま 大さじ1
    水 70cc(冷水)

     

    1. 鶏ガラスープの素、和風だし、砂糖を熱湯で溶いてから、他の調味料と冷水を混ぜ合わせ、冷蔵庫に入れておく。
    2. ボウルにあけた卵に片栗粉少々を振って泡立て器でよく混ぜ、熱したエッグパンに広げて、錦糸卵を作る。火が通ったら端を少し持ち上げて箸を横から差し入れて挟み、ひっくり返して裏面も火を通す。
    3. もやしをさっとゆで、引き上げて冷ましておく。
    4. 麺をゆでて引き上げ、氷水にくぐらせてからよく水気を切る。
    5. 麺を皿に盛ってたれを掛け、具材をトッピングする。

     

    具材ひとつひとつの特性はおよそバラバラで、
    5種類すべてをいっぺんに使った料理など考えられない。
    だが、ひとたび冷たい麺の上に一斉に載せると、
    最初から計算されたかのように見事に完成された
    「冷やし中華」というユニットになるから不思議である。

     

    そう言えば少し前に、戦隊もののようなカラーを持った
    5人組のトップアイドルグループの去就が報じられた。
    冷やし中華に置き換えて、彼らの「それから」に思いを馳せてみる。

     

    汎用性の高いもやしは、あらゆる野菜炒めを取りまとめる存在となる。
    孤立した感のある卵は、プレーンオムレツという道を飲み込む覚悟を決めた。
    ハムはサンドイッチに活躍の場を求め、
    わかめときゅうりは、元からの相性の良さを活かして、新ユニット・酢の物を結成。
    それぞれの道で、それぞれが新たな味を切り開いた。

     

    だが、5つの具材が同じステージに上がることは、もうない。
    かくして、国民的に愛された冷やし中華は、永遠に味わうことができなくなった。

     

  • 第71の皿 夏のオアシス、冷製マヨパスタ

    夏休みは、苦痛だった。

     

    学校は決して好きではなく、登校しなくてよいのはうれしいが、
    休みを渇望するほど熱中するものもなかったので、
    何をして暇をつぶすか、朝が来るたびに考えなければならない。

     

    今思えば、子ども時分の遊びの約束は、
    たいがい教室で「今日遊ぼうか?」だった。
    学校に行かない夏休みは、そうしたコミュニティが
    一切遮断されるので、遊ぶのは近所の子に限られる。

     

    だから、空き地(昭和の横浜にはゴロゴロあった)に行って誰もいなくて、
    家まで訪ねても不在なら、その日はもう、することがない。
    なにせ、固定電話しかない時代で、さらに「呼び出し」も多かった時代である。
    ※「呼び出し」がわからない人は、周囲の大人に聞いてみよう。

     

    交友関係に左右されない数少ない夏の楽しみは、
    近所の「マツイ商店」まで、父に連れられての夜の買い物だった。
    夜と言ってもせいぜい21〜22時くらいに、
    清涼飲料水やアイスを買うだけだったが、
    コンビニのない時代のお店としては格段の深夜営業である。

     

    日頃は許されなかった「子どもの夜歩き&夜更かし」が、
    大人の世界に半歩足を踏み入れた気分になって、
    夏休みで唯一の楽しい想い出として心に残っている。

     

    おかげで「夜更かしは大人の証し」という構図が刷り込まれ、
    以来数十年、夜型という種族のままである。

     

    冷製マヨパスタ(2人分)

     

    きゅうり 2本(粗おろし)
    とうもろこし 1本(ゆでてから包丁でこそげる)
    ゆで卵 2個(刻む)
    アボカド 1個(刻む)
    ツナ缶 1缶

     

    パスタ 200g(カッペリーニ250gもしくはそうめんでも可)

     

    オリーブオイル 少々
    レモン汁 少々
    マヨネーズ 大さじ6+大さじ2
    塩 少々
    白こしょう 少々

     

    1. ゆでたり刻んだりと素材の準備をして、マヨネーズ大さじ6と白こしょうと混ぜ合わせておく。
    2. パスタがゆで上がったらざるに空け、流水で粗熱を取ったのち、氷水に浸して冷やしてから水気を切る。
    3. 2つの皿に麺を盛り、マヨネーズ各大さじ1と塩、オリーブオイル、レモン汁、白こしょうで和え、1を半量ずつ載せる。

     

    大人になった今、夏休みは心から好きである。
    もっとも、正確に言うと好きなのは休みだけで、
    夏そのものはどこにも出掛けたくないほど嫌いなので、
    仮に休みを取ったとしても、家に引きこもっているだけだろう。

     

    夏休みと言えば、先月に”人間アーチ”をくぐって
    正式に我が社を卒業された「よんのじ」さんは、
    きっと今頃長い夏休みのまっただ中。
    ここはもう見ていないかもしれませんが、
    空き部屋が出来てしまった”コピペ荘”のリフォームを検討中ですので、
    それまでは今しばらく、サイト放置の失礼をご容赦ください
    (以上、業務連絡でした)。