第66の皿 香りを楽しむ凍頂烏龍茶と干しえびの炊き込みごはん

時折、思い出したように、台湾茶を嗜む。
おちょこのような器(茶杯)に注いだ烏龍茶を、
香りを楽しみながら、ちびちびと味わうのだ。
茶葉を入れる急須は「茶壺」と呼ばれるが、2人用なら茶杯2杯分しか入らない。
まるで、ままごと道具のような、かわいらしさである。

 

茶壺の値段はピンからキリまであり、比較的磁器は安く、土器は高い。
今持っている茶壺は、8年前に台湾から連れて帰って来た土器製で、
台北市内にある茶器の店で出合ったものだ。

 

棚に並べてある茶壺を眺めていると、「そちらの棚にあるのは大量生産品です」と、
流暢な日本語が背中越しに飛んできた。
初老の女主人・葉さんは、店の真ん中に鎮座するガラスケースの鍵を開け、
いくつかの茶壺を取り出してくれた。

 

ケースにあるのはすべて作家物と言い、色もデザインもすべてが微妙に違っており、
なるほどむき出しの陳列品とは明らかにレベルが違う。
その見分け方は、作家物の内側には、ろくろの筋がついていること。
このため、使用後は自然乾燥でOKで、むしろ洗剤を使ってはいけないと言う。

 

さらに、味が染み込んでいくからか、同じ品種の茶葉しか使ってはいけないらしい。
こうして使い込まれた茶壺は、独特の鈍い光沢が出るようになる。
見せてもらった葉さん愛用の茶壺は、渋い照りを放っていた。

 

ここまで聞いてしまったら、もはや大量生産品は選べない。
あれこれ物色したのち、大量品の8倍以上の値の付いた、作家物の茶壺を購入した。
金額はここでは言わないが、「急須1個をこの値段で買った」という
事実だけを見ると、気でも狂ったかと思われかねない高さである。

 

茶葉も、無農薬栽培のものは、結構な値段になる。
今回は、出がらしの茶葉を有効活用するこのレシピを。

 

凍頂烏龍茶と干しえびの炊き込みごはん(4膳分)

 

凍頂烏龍茶 出がらし1回分
しいたけ 2枚(1cm角切り)
干しえび 大さじ2
白ごま 大さじ1

 

〈具材炒め用調味料〉
ごま油 少々

 

〈炊き込み用調味料〉
塩 小さじ1/2
鶏ガラスープの素 小さじ2
酒 大さじ1

 

米 2合
雑穀 大さじ1
水 360cc

 

  1. 飲茶を終えた急須から凍頂烏龍茶を取り出し、指で茎を摘んで捨て、葉だけ残しておく。
  2. フライパンに何も引かずに1と干しえび、白ごまを乾煎りし、取り出しておく。
  3. フライパンにごま油を引き、しいたけを炒める。
  4. 炊飯器に研いだ米と同量の水を入れ、調味料と具材を加えて2時間以上置いてから、炊く。

 

おでんと合わせるごはんとして、しょうゆと出汁で炊き込む「茶飯」があるが、
それとは異なり、実際の茶葉を炊き込むリアルな茶飯である。
出がらしと言えど、烏龍茶の風味はそこそこに感じられ、
あまり見ないタイプの炊き込みごはんに仕上がった。

 

台湾茶を楽しむにはお茶請け用の甘味が必要なこともあり、
せっかくの道具もしまい込まれて、なかなか出番がない。
茶壺に鈍い光沢が出る日はまだまだ遠いが、
これからも定期的に台湾茶を味わい続けたい。
茶飯も含めて、まさに日常茶飯事として。