第23の皿 喫茶店のナポリタン

お子様ランチの付け合わせに欠かせない、
オレンジ色もあざやかなスパゲティ・ナポリタン。
子どもなら誰でも好きなこの味に、大人になってもう一度出会う場所がある。
そう、喫茶店だ。

 

このナポリタン、パスタの本場イタリアに存在しないのは、もう有名な話。
第二次大戦後、横浜・山下公園の真向かいにあるホテルのシェフが考案した説が有力だ。
麺の芯にわずかな硬さを残すアルデンテが当時の日本人に理解されず、
半ばまでゆでてから一晩置き、うどんに近い食感をわざわざ作り出したとされる。
この「ゆで置きの麺を炒め直す」という簡単さが、
喫茶店や給食、そして家庭にまで広まった理由らしい。

 

子どもに好かれる一方で、大人にも受け入れられたのは、
タバスコの存在が大きかったのではないか。
こちらも、パスタの本場イタリアでは見かけないアメリカ産だ。

 

くだんのホテルは、長らくGHQに接収されており、それを解かれた際に、
倉庫には乾麺とケチャップが大量に残されていたとか。
兵士たちの軽食や夜食として、両者を和えたものが食べられていたためで、
この在庫を使って、復活したホテルの看板料理として考えられたのが、
現在のナポリタンの原型とされている。
つまり、もともとアメリカ流のパスタだから、タバスコとの相性もよかったわけだ。

 

スパゲティ・ナポリタン(2皿分)

 

たまねぎ 1/2個(薄切り)
ピーマン 2個(縦に2分割→横にして薄切り)
ブラウンマッシュルーム 3個(スライス)
ソーセージ 3本(真ん中で2分割→縦に4つ切)

 

パスタ  160g(1.6mm以上の太めのものがよい)

 

オリーブオイル 大さじ1
パスタのゆで汁 大さじ4
ケチャップ 大さじ6(具に大さじ2・麺に大さじ4)
牛乳 大さじ1
塩 少々
白こしょう 少々
ドライパセリ 少々
粉チーズ 少々
タバスコ お好みで

 

  1. フライパンにオリーブオイルを入れ、たまねぎを透き通るまでじっくり炒める。
  2. たまねぎを端に寄せ、ピーマン、ソーセージ、マッシュルームの順に加えて炒める。
  3. 牛乳とケチャップ大さじ2を入れて、具となじむまで炒め、パスタのゆで汁大さじ4を加えてトロリとさせる。
  4. 表示時間通りにゆでたパスタをフライパンに入れ、パスタのみにケチャップ大さじ4と白こしょうを加えて絡め、麺が均等に色づいたら、具と和えて塩で調味する。
  5. 皿に盛り、ドライパセリと粉チーズを振り掛け、お好みでタバスコも掛ける。

通常のパスタはアルデンテにするために表示時間より短めにゆでるが、
このパスタだけは時間通りにゆでて、やさしい口当たりに仕上げる。
さらに、具にパスタのゆで汁を加えることで、麺とのなじみがとてもよくなる。
また、ゆで上がった麺をフライパンにあけたら、具と和える前に、
麺のみにケチャップ大さじ4を混ぜ合わせ、味をしっかりと入れよう。

スパゲティと呼ばれ、味付けもミートソースとの2択だった、昭和時代のパスタ。
テーブルにタバスコを置くような昔ながらの喫茶店は、
個人経営のお店が激減して、今や絶滅危惧種であるが、
よく通っていたあの店を、あの時代を思い出す、懐かしいおいしさである。