読む日々

主に利用している私鉄は京王線です。
特急や準特急や区間急行や、時には各駅停車にも乗って、通勤し、
休日には下りに乗って高尾山に行ったりもします。
中央線ほどの文化もなく、小田急線ほどのスター駅もない、
ただひたすら八王子または橋本と新宿を結ぶだけ。
そんなまじめな多摩地区民の足、京王線に日々揺られています。

 

そして、つい先日いつものようにぼーっと最寄り駅から電車に乗り込んだら、
目を見張るような光景にでくわしました。
偶然乗り合わせたのは、来春から有料の座席指定車として導入される、
5000系と言われる新型車両。
普通の電車と同じように対面式で、優先席もありますが、
長いシート6席、優先席3席で、席ごとに肘掛けのついた固定式。
それは今までに見たことのない構造でした。
写真を撮りたかったものの、乗客の多い通勤電車ではさすがに無理。
気になる方は京王電鉄のホームページへ。ちょっと画期的な車両です。

 

少し前までは、電車に乗る人が見ているものは、本や新聞でした。
そうでなければ窓の外を眺めているか、寝ているか。それが普通の風景でした。
しかしいつからか、見つめているものはガラケーになり、
スマホになりました。7人掛けのシートに座る全員がスマホを見つめ、
何やら操作をしているのが当たり前になりました。もちろんわたしも。

 

本や新聞を読んでいる人は完全に少数派になりました。
それでも文庫本や新書、時にはハードカバーを読んでいる人は見かけますが、
いわゆるマンガ雑誌を読んでいる人はもうほとんど見かけません。
一車両に自分だけ、というぐらいにです。
そうです、わたしは未だに「週刊モーニング」と「ビッグコミック」と
「ビッグコミックオリジナル」と「ビッグスペリオール」の
4誌は必ず読んでいます。
社会人1年生だった頃に職場の先輩が読んでいたのを
何となく手に取ってからずっと、
連載が始まっては終わっていった幾つもの名作やそうでもない作品を経て、
課長だった島耕作は会長にまで上り詰めたのに、
“釣りバカ日誌”の浜ちゃんは相変わらず平社員のままで、
生まれてもいなかった“クッキングパパ”の荒岩の娘は中学生になり、
ゴルゴ13ことデューク東郷は相変わらずのスナイパーで、
つい先だっては“浮浪雲”が44年の連載を終了するに至り、
純粋な新入社員だったわたしも何回かの勤続表彰を受ける年齢になりました。
電子書籍に移行するタイミングも逃し、
辞め時がわからないままもう何十年も読み続けているのです。

 

年齢に合わなくなったり、廃刊になったりして、
購読をやめた雑誌もありますが。結局今でも手に取っている4誌には、
ずっと読み続けられるヒキのある連載が必ずあります。
オリジナルがおもしろい時期、スペリオールが充実している時期、
と波はありますが(ちなみに今はモーニングが一番)。
連載の内容に一喜一憂するだけでなく、雑誌自体の浮き沈みもあり、
それは大げさに言えば人生のようです。
マンガに限らず、雑誌を読むことの醍醐味は、
普段自分が興味がないと思う作品や記事の中に、
次の何かにつながる宝石のような出会いがあることです、大げさですが。

 

マンガはもちろん、電車の中が一番活字を読むのがはかどります。
おもしろい本を読んでいて、
降りる駅を過ぎてしまうことが今でもたまにあります。
本を読むために、わざと各駅停車に乗ったり、
終点まで行って折り返すこともあります。
京王線の新型車両は座席指定車だそうですから、
来春からはたまにはゆっくり座って読書をしながら帰ろうかと思います。
新年度にはそれを許してくれるような、新しい働き方ができるでしょうか。

 

2017年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。
実は最近、視力が衰えて活字を読むのが億劫になってはいるんですが。