地図の日々

本来なら暑い夏が去って、厳しい残暑も過ぎて、
天高く馬肥ゆる、という感じのさわやかな秋が来るはずだったのに。
来る日も来る日も片手に傘を持って過ごし、
しかも週末に限って、確実に雨または台風が来る、というような天候が続き、
さらにそのおかげで我が広島東洋カープがクライマックスシリーズで
3位の上に文字変換もしにくい横浜DeNAベイスターズに
史上最大のゲーム差の下克上をくらう、というみっともないことになった、
いろいろな意味で記憶に残る2017年10月も終わりました。

 

そして11月が始まり、最初の週末は、
本当に久しぶりにいい天気で、しかも3連休。
ずっと洗濯できなかった大物のシーツや布団カバーを洗いながら、
それまでほとんど見たことのなかったネットテレビを見ていました。
そうです、SMAP解散後、
ジャニーズ事務所を離れて新プロジェクト「新しい地図」を立ち上げた3人が
出演した、Abema TVの「72時間ホンネテレビ」です。
退所後、サイトを立ち上げたり、ネットテレビに出演することを発表したり、
というそのアグレッシブな姿勢を見ながら、そんな目立つことをしてたら、
いつか芸能界のものすごくエラい人に怒られるんじゃないだろうか、
と勝手に心配していました。
昭和の芸能通であるわたしには、
事務所を辞めて独立する=しばらく干される→そのまま鳴かず飛ばず、
という図式が染み付いているのです。

 

しかしそれは杞憂でした。
もちろん彼らが一世を風靡した人気者だったということもあるのでしょうが、
ジャニーズ事務所&地上波ではできないことが、
しがらみのない(ように見える)ネットテレビでは軽々と実現できて、
昔のテレビの生放送の、これから何が起こるんだろう、
誰が出てくるんだろう、というワクワクした気持ちを思い出させてくれました。
もうコンプライアンスだらけ、予定調和だらけの
地上波はいらないのかもしれないな、と思わされました。

 

そして同じ3連休に、かつての地上波の雄フジテレビが、
30年続いた「とんねるずのみなさんのおかげでした」と
22年続いた「めちゃ×2イケてるッ!」の来春の終了を発表しました。
偶然のタイミングなのかもしれませんが、
大きな交代劇をリアルタイムで見た気がします。
「72時間ホンネテレビ」はそれだけのことに成功し、
ジャニーズ事務所を敵に回したと思われた3人やスタッフは、
文字通り新しい可能性という地図を大きく広げました。
誰が考えたのか知りませんが、大した策略だと思います。
若い人たちはもうとっくにネット界を歩く詳しい地図を
持っていたのかもしれないけれど、
この3連休は、SMAP世代である中年層にもざっくりとした
略地図が配られたような気がします。
なにせAbema TV史上最高の7000万超えの視聴数を叩き出したそうですから。

 

わたしも番組のすべてを見たわけではありませんが、
中でもさまざまな大人の事情があって地上波では絶対実現できないと言われた、
元メンバーの森くんこと森且行との21年ぶりの再会シーンには
感慨深いものがありました。長年テレビを見ていると、
生きているうちにもう一度見たい、と思う、人や場面があります。
時計の針は元に戻せないものの、
そうやってふとした時にそれが実現すると、
極端な話、涙腺がゆるんだりするんです。

 

そして奇しくもその1週間後の11月10日のNHKの「SONGS」では
井上陽水と玉置浩二が実に31年ぶりに“夏の終りのハーモニー”をデュエットしました。
昭和のビデオ録画だったら、ツメを折るレベルの永久保存版、
これぞわたしが死ぬまでに見たかったシーンです。
歌の妖怪・玉置浩二をちょっとビビらせる、真のラスボス井上陽水。
SMAPと森くん並みに、いや世代的にはそれ以上に、感動的な二人の立ち姿と歌声でした。
ちなみに、あと死ぬまでに見たいのは
チェッカーズとBOOWYとglobeの再結成です。

 

そしてもし、時計の針を少しだけ元に戻せるなら、
10月の半ばに戻ってCSのファイナルステージをやり直してもらいたい。
何ならファーストステージまでやり直して阪神に勝ってもらいたい。
それならカープが日本シリーズに行けたはずです。
死ぬまでにいろいろなものが見たい、といいつつ、
往生際が悪い、とはこのことですが。