N

先日の世界陸上に、オスカー・ピストリウスという
両足義足のランナーが出場していた。
惜しくも決勝進出はできなかったけど、
健常者と遜色ないタイムで走る彼を見ていて、
ふと高校の同級生で同じバスケ部だったNのことを思い出した。

詳しくは知らないけれど、Nはこどものころに、
病気のせいで下半身にまったく力が入らなくなったそうだ。
バスケは中学になってから始めたらしく(いわゆる車いすバスケというやつ)、
その実力は、当時の車いすバスケジュニア日本代表に選ばれるレベルだった。
普段はのほほんとしているくせに、実はすごいやつだったのである。
ちなみに、チェアスキーもかなり上手かった。

 

Nはシュートが上手かった。
他の部員に比べても全然負けてないどころか、
むしろNのほうが上手いんじゃ?ってくらい。
僕よりは確実にNのほうが上手かったと思う。

 

なにより驚いたのが、3ポイントシュートが届くこと。
Nは下半身が動かないから、上半身の力だけでシュートすることになる。
おまけに、車いすだから立ってシュートするより打つ位置が低い。
当然、ゴールは立っているより遠くなる。
それなのに、横で届かなくて困っている僕を尻目に、ばんばんシュートするのだ。
しかも入る。
すごい!としか言いようがない。

 

Nにはよく部活後のシュート練習につきあってもらった。
ある意味師匠みたいな存在だった。
まったくの初心者だった自分でもそれなりにシュートが入るようになったのは、
Nのおかげなのかもしれない。

 

そんな感じで彼と3年間を過ごしてて感じたのは、
自分が車いすに乗っていることを、あまり障害だと思ってないんじゃないか?ってこと。
むしろ、車いすは自分の足だ、ぐらいに考えてたと思う。
少なくとも、僕にはそう見えた。

 

ピストリウス選手だって、そうだ。
僕たちからすれば義足だけれど、
彼にとってはもう自分の足そのものって感覚なんじゃないかな。
反発力がどうのとか、議論は尽きないと思うけど、
個人的にはこれからもチャレンジを続けていってほしいです。

 

ちなみに現在Nは、地元の車いすバスケのチームに所属して、
日本代表に選ばれるために頑張っているらしい。