セールの回

暦の上ではもう春だそうです。
まだまだ寒い日が続きますが、みなさまお変わりないでしょうか。
お変わりあってもよござんす。良いことならば。

 

さて。
冬はセールの時期、ということで靴を買ったわけです。
若干の撥水加工が施された黒いショートブーツみたいなもので、
わたしは足のサイズが24.0なのですが、
ためしに履いてみたらまぁまぁの履き心地でした。

 

その靴はEEEEというサイズのもので、
無知すぎて知らなかったのですが、Eが増えるにつれて、
かかとの辺りがどんどん広くなるらしいのです。

 

それが履きやすさにもつながるわけですが、
そのブーツ、4Eということもあって、少しぶかぶかだなという印象。

 

でも女性の店員さんは「うん、ピッタリですね〜」とか
「これすごい人気でもう飛ぶように売れてるんですよ〜」とか
買わせるための言葉しか使わないわけです。

 

そんなに高くもないし、履きつぶしちゃうくらいの普段使いにすればいいかと、
その時は軽い気持ちで購入しました。

 

ところが。

 

後日、そのブーツを履いてみるとどうでしょう。
かかとの辺りがガッバガバで、歩けたものじゃないんです。

 

これは失敗した・・・と思いつつ、
そのお店で中敷きなどの対応をしてくれるか聞いたところ
どうぞお気軽にお越しくださいとの返事。

 

じゃあ気軽に行ってやろうということですぐに行ったわけですが、
シューリペアのエキスパートで、店長代理という男性に担当してくれました。

 

その人からの提案は、

 

「クッションを敷いて全体を底上げすることで、
足の甲のあたりにもっとフィット感を出せば、
足が前にすべってしまうということも減るのでは」

 

ということでした。
口で説明されてもよくわからないので、それでお願いしますと言って、
度重なる調整の果てに、なんとなく、かかとがズレにくくなりました。

 

そこでお礼を告げ、また帰ろうとエスカレーターに乗り、
歩いていたところ・・・今度は、靴の中で中敷きがズレてきました。

 

たった今、「ありがとうございました」と言って去った店に、
また舞い戻る・・・?

 

面倒くさすぎる展開です。
また来ちゃいましたテヘ☆と言わねばなりません。

 

でも歩くたびにどんどんズレていく中敷きくん。
まるでズレるのが僕の使命です!と言わんばかりの優等生的ズレ方です。

 

意を決して店内に戻りました。

 

少し驚いた様子の店長代理。

 

「どうされました?」

 

と聞かれ、中敷きがズレることを相談したところ、
クッションの厚みを変えてさらに滑りにくい素材の中敷きに変えましょう、と。

 

数分後、クッションが変わりフィット感が増し、
滑りにくい素材のおかげでだいぶマシになった気がしました。

 

店長代理に改めてお礼を言い、再びエスカレーターへ。
これなら大丈夫かなとベルトの上で足を踏みしめ、
エスカレーターを降りて足を踏み出した瞬間、

 

ズレました。

 

もうぐでんぐでんに、かかとの部分がズレまくりました。
これが新喜劇なら全員総コケするでしょう。
というかわたしの中の新喜劇の人たち(妄想)は総コケしました。

 

しかも、さっきよりズレ方がひどい。
中敷きくん、グレてしまったみたいです。
親から期待される自分がつらくなり、ある時に爆発してしまった思春期のズレ方です。

 

一日の間に、2回もお店に戻る・・・?

 

店長代理のシューリペアエキスパートとしての誇りを
傷つけてしまう可能性もあります。

 

でも、戻りました。

 

だって歩きづらいんだもん。
今度は店長代理も困惑した表情で苦笑い。

 

中敷きくんのグレ方、もといズレ方を聞き、
それでは両面テープで動かなくしましょうという結論に。
対応としては職員室呼び出しでお説教というところでしょうか。

 

数分後、両面テープで動かなくなった中敷きにひと安心。
店内を少し歩いてもズレませんでした。

 

もうすっかり打ち解けた店長代理に、

 

「今度くるのは来年ですよ〜(笑)」とか鬼が笑いそうな感じで話し、
三度、エスカレーターに。

 

これでもうズレることはあるまい。
中敷き軍との長き戦いに勝利したのです。

 

恐る恐る一歩踏み出し、おや・・・平気です。
また一歩・・・大丈夫。

 

よかったこれn

 

ズレました。

 

両面テープがはがれて、中敷きくんは靴の中で暴動を起こしていました。
盗んだバイクで走り出したかのようです。もう誰にも止められません。
靴主はわかってくれない!と反発したようです。

わたしは、呆然とその場に立ち尽くしました。
今日はタイムオーバー。

 

とりあえず、靴の中でぐちゃっとなった中敷きくんを
体重という権力で上から踏みつけて動かなくし、
ため息とともに、その場を後にしました。

 

後日、4度目となる来訪を果たしたことは言うまでもありません。

 

暴れん坊な中敷きくんはおとなしくなるのか、
店長代理とともに経過を見守る日々が続いています。