ビンテージ

先日、古着屋でよさげな靴を見つけた。

 

赤と黒のチェック柄のスリッポン。

 

これからの季節にぴったりそうである。

 

ちょっと日焼けしちゃってるけど、
そこがまたいいアジ出してる感じだ。

 

しかも、よくよく見てみると、
これ、中学のころ友達が履いていた靴の色違いではないか。

 

そういえば、この靴、欲しかったんだよなあ。

 

あの頃の記憶が鮮明によみがえってくる。

 

懐かしい。

 

さっそく手に取ってみると、
白いタグにはこう書かれていた。

 

「90’s vintage deadstock !!」

 

vintage!?

 

ちょ、ちょっと待ってほしい。

 

90年代のものなのに、ビンテージだって?

 

90年代ってそんなに古くないでしょ。

 

まだ全然最近じゃないか。

 

自分の中学時代のものが、すでにビンテージ扱いという衝撃。

 

たしかに懐かしいとは思うけど、いやしかしこれは……。

 

思わず店員さんに

 

「これ本当にビンテージなんですか!?」

 

と聞いてしまった。

 

店員さんは苦笑いしながらうなずく。

 

まるで、そこにそう書いてあんだろちゃんと読めよ、
と言っているかのように。

 

ぐぐぐ。

 

手元にある靴に目を向ける。

 

こころなしか、靴がしょんぼりしているような気がした。

 

そうか、お前もかなしいか。

 

まだ新しいのに、ビンテージ扱いされるのはつらかろう。

 

よし、僕がお前を買ってやる。

 

僕はお前をビンテージ扱いなんてしないぞ。

 

現役でがんがん履いてやるからな!

 

こうして我が家の靴箱に、また新しい仲間が増えたのであった。

 

僕は思う。

 

ああ、なんて自分は自分に甘いんだろう。