第95の皿 シンプルな眼で、かきたまスープ

「象を冷蔵庫に入れるために必要な3つの手順は?」
なるクイズが流行した時期があった。
答えは「冷蔵庫の扉を開ける→象を入れる→扉を閉める」で、
まじめに象のサイズ感に悩んだ人を引っ掛けるものだ。

 

この設問は、物事をシンプルに捉える大切さの教訓として、
ビジネス現場で好んで語られてきた話題らしい。
本物の象をいかに冷蔵庫に入れるかというソリューションに挑んだ精神は尊いが、
求められる正解は「単なるマニュアルづくり」でよかったわけだ。

 

このクイズには、続きがある。
「では、キリンを冷蔵庫に入れるために必要な4つの手順は?」
正解は、扉を開けたあとの手順に「象を冷蔵庫から出す」を加えること。
それから、キリンを冷蔵庫に入れ、扉を閉めるのだ。

 

思えば料理も、細かい手順の連続である。
「冷蔵庫の扉を開ける」を1手順に数えるなら、
完成品をひと皿を作るためには、
いったい幾つの手順が必要になるだろうか。

 

今回は、なるべく手順の少ないシンプルな料理を。
もちろん「冷蔵庫の扉を開ける」からは始めないので、
そこのところはひとつ各自で、
行間を読んでいただくようお願いしたい。

 

 

かきたまスープ

 

卵 2個
コンソメキューブ 2個
水 1200cc
黒こしょう 少々

 

1. 小鍋に水とコンソメキューブを入れ、沸騰直前まで温める。

2. 火を弱め、ボウルに溶いた卵を流し入れ、固まるまで温める。

3. 器に注ぎ、黒こしょうを振る。

 

料理の手順は、作ったらそれで終わりにはならず、
「食べる→皿を洗う→皿を拭く→皿を棚に仕舞う」まで続く。
本当は、ここに載せるための「写真を撮る」もあるのだが、
「食べる」の途中まで、この手順を思い出せないこともしばしばである。