第77の皿 汚名を雪ぐ、みぞれ鍋

大根は、不憫だ。
「大根足」「大根役者」と、
何かに付けて悪口のタネにされている。

 

もともとの「大根足」は、褒め言葉。
大根のように太いのではなく、大根のように白いという、
素肌の美しさを褒める言葉だったのだ。

 

「大根役者」は、悪口ではあるが、
“当たらない”(=売れない)はどのような調理を行っても
決して食あたりすることのないところから来ている。
大根そのもののよい機能を語っているのに、
悪口として利用されるのは理不尽である。

 

下手な役者が「大根」と呼ばれるようになったのは、
「当たらない」の他にも諸説あって、
「大根おろし=舞台からおろされる」
「馬の脚の役ばかり=足が大根を連想させる」
「予備の役者=ダイコウ(代行?)より」
「白い=演技のしろうと」
「下手な役者は白粉を多用することから」
「場が白けるから」
などなど、大根のあらゆる特徴が、
これでもかとばかりに、こきおろしの材料となっている。
ある意味、あらゆる料理の素材に活用される大根ならではと言えようか。

 

みぞれ鍋

 

大根おろし 1/2本分
豚肉(しゃぶしゃぶ用) 200g
絹ごし豆腐 2丁
水菜 1束
しめじ 1パック

 

ぽん酢しょうゆ お好みで

 

  1. 鍋に水(分量外)を張り、具材に火を通す。
  2. 大根おろしを加える。
  3. ぽん酢しょうゆでいただく。

 

冬の寒い夜にうれしい、大根おろしを雪に見立てた鍋ものである。
大根役者だの大根足だの、悪しざまに例えられがちな大根を使った、
ビタミンCたっぷり、ぬくもりいっぱいの鍋。
雪のように白い大根が、汚名を雪ぐ(すすぐ)一品と言えよう。