第58の皿 夏はアイスで、みょうがのみそ汁

「みょうが宿」という落語がある。

 

旅籠の夫婦が宿泊客から一晩大金を預かり、一計を案じる。
物忘れをしてお金を置いてってくれたらという思いで、
漬物からごはんからみそ汁まで、フルコースかというくらい
みょうが尽くしの料理を振る舞う。
しかし翌日、客は忘れずにお金を受け取り、出発してしまう。
「あれだけ食べさせたのにおかしいな」と首を傾げる夫婦は、
実は客から宿賃をもらうのを忘れていた。
強欲なものだから、昨夜残ったみょうがをたくさん食べてしまって・・・
というオチである。

 

みょうがを食べると物忘れをするという俗説だが、もちろん根拠はない。
むしろ近年、その高い香りを放つ成分に集中力を増す効果が
あることがわかっているそうで、まったくもって言いがかりも甚だしい。

 

お釈迦様の弟子の一人がとんでもなく記憶力に乏しい人物で、
自分の名前を忘れてしまうほどだったという。
そこで名札を首からぶら下げられたのだが、その事実すら忘れてしまう始末。
この名札のことを名荷(みょうが)といい、これと同音だったものだから、
このような濡れ衣を着せられることになったとか。

 

そのみょうが、今が旬真っ盛りである。

 

みょうがの冷たいみそ汁

 

みょうが 6本(小口切り)
しめじ 1パック

 

水 1000cc
和風だしの素(煮干し系) 1パック
みそ 大さじ3

 

  1. 水を張った鍋を沸騰寸前まで沸かし、刻んだみょうがとほぐしたしめじを入れて火を弱め、あくが出たらすくっておく。
  2. みそだしを入れた器にゆで汁を加えて溶き、鍋に入れて弱火で軽く煮る。
  3. 粗熱が取れたら冷蔵庫に入れ、よく冷やす。

 

ある時、みょうがを具にみそ汁を作り、余った分を冷蔵庫に入れておいたのだが、
取り出して冷たいまま飲んだら、温かいものよりうまかった。
以来、我が家の夏の定番のひとつとなった。

 

たっぷり刻んだみょうがの、清涼でさわやかな香り。
忘れさせられることはただひとつ、夏の暑さだけである。