第56の皿 BSから、フランセジーニャ

ドラマを毎週見る気力が薄れ、
バラエティ番組の笑いのツボがわからなくなってきた。
そんな世代の行き着く先が、BS放送である。
メインは、旅番組。
ゴールデンタイムのBSの番組表は
「紀行」「温泉」「鉄道」「ヨーロッパ」「大人」
「遺産」「世界」「旅」「歩き」「バス」「街」
などのキーワードに満ちていて、
これらの単語の適当なシャッフルで番組名が出来ているかのよう。

 

地上波の旅番組の、いわゆる「旅人」方式だと、
視聴は旅人役のタレントの好感度に左右されるが、
BSの旅番組は、俳優によるナレーションが基本フォーマット。
たとえ主人公として旅をする設定であっても、
実際に本人が登場することはないから、画面の安定感がこの上ない。
逆に言えば、音声を消して番組を流した場合、
どの番組かを当てるのが極めて難しいとも言える。

 

BSは、レギュラー番組でも新作の翌週に再放送を流すのがいい。
見たものを片っ端から忘れていく世代が多く見るBSならではである。
ある番組では最近、1年間のレギュラー放送終了後の翌週から、
第1回に戻って毎週の再放送を開始した。
これはいくら何でも、と思ったが、
やっぱり初めて見たかのように楽しめてしまうのだから、
今や立派なBS視聴者と言えるだろう。

 

旅番組は、料理の参考にもなる。
世界の珍しい料理を取り上げつつも、
作り方を詳しく紹介するわけではないから、
見よう見まねでオリジナル料理を作り出すことができる。
たとえば、こんな料理。

 

フランセジーニャ(2人前)

 

食パン(6枚切り) 4枚
溶けるスライスチーズ 4枚
ベーコン 2枚(ハーフサイズなら4枚)
生ハム 2枚(約20g)
卵 2個

 

〈ソース〉
たまねぎ 1/2個(みじん切り)
にんにく 1かけ(みじん切り)
トマトケチャップ 大さじ4
タバスコ 5たらし
チリパウダー 小さじ1
ビール 100cc
ブランデー 大さじ4
薄力粉 大さじ1
水 大さじ3
オリーブオイル 大さじ1

 

  1. フライパンにオリーブオイルを引き、にんにく、たまねぎを炒めてハンドミキサーの容器に入れ、なめらかになるまで回す。
  2. 1をフライパンに戻し、調味料を加えてソースを作る。
  3. 耐熱皿にパンを1枚置き、ベーコン、チーズ、生ハムの順に載せ、さらにパンで挟み、生卵を割り入れ、チーズを載せる。
  4. 2のソースを掛け、オーブン(余熱あり・200℃で15分)で焼く。

 

ポルトガルのポルト地方の料理だそうで、意味は「フランス娘」。
フランスに移民したポルトガル人が、
クロックムッシュやマダムを食べて発想したもので、
なんとこれはサンドウィッチのカテゴリーに入るのだとか。

 

トマトソースは、辛いものが定番らしいので、タバスコを使ってみた。
挟む物は、スライスした牛肉やソーセージ、
えび、卵など、割と何でもアリのようだ。
ソースには、ビールもしくはポルトワインを使うのが決まり。
このボリュームの上に、現地ではフライドポテトまで添えるのだという。

 

果たして、これが正しい味なのかどうかは、
永遠の謎であるが、BSが橋渡ししてくれた、未知なる食。
忘れた頃に、また作りたくなるおいしさである。