第51の皿 ひどくメランコリックなカリフラワーのグラタン

山手線の西側の下の方にある、とだけ言っておこう。
だから下町ではないのだが、さりとて山の手とも呼び難く、
ビジネス街とはおよそ言えないが住宅街とも異なる、
やや中途半端なイメージのある駅の近くに、そのお店はあった。

 

山手線の駅から徒歩3分であるにも関わらず、
初めての訪問時では、見つけるのに10分は費やした。
お店は逃げも隠れもしていないのに、濃厚な隠れ家感が漂っていた。

 

夜間だけ営業しているお店の中は、暗かった。
開店直後だったのだが、店じまいしたのかと思える薄暗さ。
注文を取りに来た店主の印象が残っていないほどの明るさである。
ちなみに、お店にいたのは店主ただ一人。

 

やや大きめの音で流れていたのは、フランスのテレビ番組の録画音声。
厨房内にあるテレビを店主が見ているだけだから、内容の詳細はわからない。
司会者のジョークに観客が笑い、ゲストが登場するたびに拍手、
時に場面転換のための短い音楽、という音声が繰り返されており、
どうやらヨーロッパで夜に放送されるタイプのバラエティショーらしい。
フランスだと思ったのは、そのお店がリヨン料理を出すからである。

 

料理は、おいしかった。
前菜に出てきた生ハムの塩気の強さは本場さながらで、
ワインと合わせてこその味。
そう言えばこの店は、酒の飲めない人間は入店お断りという
ドレスコードならぬ「アルコールコード」がある店だったのだ。

 

店の雰囲気と相まって、どう考えてもここが●●●(駅名)とは思えない。
ワインが重なるにつれ、不思議な感覚が増幅していった。
そんな中で、特に印象に残ったのが「カリフラワーのグラタン」である。

 

カリフラワーのグラタン(2皿分)

 

カリフラワー 大1/2株(小なら1株・小房に分ける)
たまねぎ 1/2玉(みじん切り)
ホワイトマッシュルーム 1パック(スライス)
白いしめじ 1パック
にんにく 1かけ(みじん切り)

 

〈ベシャメルソース〉
バター 大さじ3
薄力粉 大さじ5
牛乳 400cc

 

熱湯 200cc
コンソメの素 1個(刻む)

 

ピザ用チーズ 100g
パン粉 大さじ4
粉チーズ 大さじ2
ドライパセリ 少々

 

  1. 小房に分けたカリフラワーを皿に入れ、ふんわりラップをかけてレンジ500Wで5分加熱する。
  2. フライパンにバターを熱し、たまねぎをじっくり炒め、香りが出るまでにんにくを炒める。しんなりしたらきのこ類を炒め、取り出してフードプロセッサーに入れ、高速でペースト状にする。
  3. フライパンで1を少し焼き色が付くまで炒め、取り出しておく。
  4. 2をフライパンにあける。3をフードプロセッサーに入れて低速で粗く刻み、フライパンに移して混ぜ合わせ、皿2つに取り分け、平らにならしておく。
  5. 牛乳をレンジで温めておく。
  6. フライパンにバターと薄力粉を入れ、とろみが出るまで弱火で炒める。温めておいた牛乳を少しずつ加えて弱火で練り上げる。コンソメの素を溶いた熱湯を注ぎ、フライパンにあけてソースをのばし、2皿に分けて入れる。
  7. ピザ用チーズ、粉チーズ、パン粉、ドライパセリを2皿に分けて入れ、200°Cにしたオーブンで12分焼く。

 

例によって中身は完全に推測だが、まあまあ満足の味に仕上がった。
具がすべて白っぽかったから、白色系のきのこで
うま味を強めていたのは間違いのないところ。
寒い冬にぴったりの、あたたかでやさしい味である。

 

お店での魔法の時間は、中盤過ぎに他の客が来たところで、瞬時に解けた。
日本語が聞こえてきた途端に異国情緒は消え去り、
ここが●●●(駅名)だったことが思い出されたからである。