第46の皿 パリの路地裏のスープ・ド・ポワソン

近所のトラットリアで、懐かしいメニューに再会した。
濃厚な魚介のスープである。
貝もあわせて5〜6種類の魚を使ったというその一皿は、
味が複雑でコクがあり、何よりも温かさに満ちている。
ぬるめのスープを出すお店が多い中、
このお店は温かくあって欲しいものをアツアツで出してくれるのがうれしい。
スープは、魚と野菜が煮崩れて混ざり合った状態になっており、
飲むというより、具と汁をスプーンごとあむっと食べる、という感覚だ。

 

このおいしさに最初に出合ったのは、パリにあるビストロである。
「新橋のガード下で」とでも書いておけば自慢話にならずに済むのだが、
嘘をついても仕方がないので、正直に書いておく。
ルーヴル美術館を擁するパリ1区は、市のほぼど真ん中。
だが、にぎやかなルーヴルを少し離れると、小さな通りがいくつも現れる。
その一角にあるという、魚料理専門店を目指した。
魚にこだわるあまり、不漁の時は臨時休業、
というのは後で知った話だが、ガイドブック片手に路地裏を迷いつつ、
ようやく辿り着いたので、お店が開いていてつくづくよかったと思う。
このビストロの前菜のスープが、絶品だったのである。

 

スープ・ド・ポワソン(8皿分)

 

真鱈 2切れ(ぶつ切り)
真鯛 2切れ(ぶつ切り)
えび 1パック
魚のあら(1種類) 適宜(骨付きのものがよい)

 

たまねぎ 2個(みじん切り)
にんじん 1本(みじん切り)
セロリ 1本(みじん切り)
エシャレット 1束(みじん切り)
トマト 1個(皮と種を除いて角切り)
マッシュルーム 1パック(スライス)
にんにく 2かけ(みじん切り)

 

オリーブオイル 大さじ2
白ワイン 100ml
水 1500ml
ローリエ 2枚
タイム 大さじ1

 

トマト水煮缶 1缶
コンソメの素 1個
パプリカパウダー 大さじ1
サフラン 1つまみ

 

  1. 鍋Aに水と白ワイン、魚のあら、野菜の切れ端とローリエ、タイムを入れて火に掛け、沸騰したら弱火に落とし、20分ほど煮る。あくを取り、スープだけ濾しておく。
  2. 鍋Bにオイルを引き、野菜を炒めたら1のスープとトマト水煮缶、コンソメの素、パプリカパウダーを加え、ふたをして1時間煮る。
  3. フライパンで魚介を炒めて鍋Bに加え、具をハンドミキサーで粗く砕く(食感が残るようにざっくりと)。
  4. サフランを加え、20分ほど煮る。

 

パリのお店では、スープは陶器の壷に注がれていた。
この壷のそばに、ちぎったバゲットを盛った皿と、ルイユが添えられる。
ルイユとは、卵黄とオイルとガーリックを混ぜ合わせた、
辛みのあるマヨネーズ状のソースのこと。
これとバゲットを、スープに浮かべていただくのだ。

 

冬の寒さが厳しい石畳の街で、パリジャンたちを温める魚介のスープ。
蒸し暑さが続く中、このスープを心から楽しめる気候が恋しい、今日この頃である。