第4の皿 セイシュンのツナとなめたけのパスタ

私は、苦学生だった。
学生の身分を維持するには月々の生活費を捻出する必要があり、
そのため大学にはあまり行っていなかった。
まさに本末転倒であるが、単に学業が好きじゃないから行かなかった事実もあり、
学ぶのが苦痛な生徒という、間違った意味での「苦学生」だった側面は否定できない。

 

アルバイトは、雑誌で見つける。
当時は学生向けのアルバイト情報誌が、よく売れていた。
テレビCMも数多く作られていたから、現在とは隔世の感がある。
そんな雑誌の中に、アルバイトに励む貧乏な学生向けに、
安価な食材を使ったレシピを紹介する連載があった。

 

その中のひとつに、「つなめたけごはん」という料理があった。
研いだお米の入った炊飯器に、ツナの缶詰と、なめたけの瓶詰の中身をあけて
そのまま炊き込むという、極めてシンプルなレシピ。

 

しかし、これはうまかった。
味付け不要で炊き込みごはんができるのは、
ひとり暮らしの貧乏学生にとって、ありがたい。
もっとも、ツナ缶となめたけ瓶だけなのに、
それですら「たまのぜいたく」という位置づけだったのは、切ない話ではある。

 

この、つなめたけごはんは、まだ料理をしていない頃の私の
数少ないレパートリーとして長年にわたり君臨した料理である。
後年、料理をするようになって、まず最初に試みたのが、
この料理のパスタメニューへの変換だった。
ただし、ゆでたパスタにツナ缶となめたけ瓶を混ぜ合わせただけでは、
たぶんあまりうまくない。
いや、そこそこ、うまそうな気もするが、これではレシピとは言えない。
試行錯誤の末、完成させたのが以下のレシピである。

 

ツナとなめたけのパスタ(2人前)

 

長ねぎ 1本(みじん切り)
ツナ缶 1缶
なめたけ(減塩) 1瓶

 

パスタ  160g

 

オリーブオイル 大さじ2
白ワイン 大さじ2

 

  1. フライパンにオリーブオイルを熱し、長ねぎをじっくり炒める。
  2. ツナ缶となめたけ瓶をフライパンにあけ、白ワインを入れる。
  3. 表示時間より少し短め(6分表示なら5分半)にゆでたパスタをフライパンで和える。

水気が少なすぎるようなら、パスタのゆで汁も少し足す。
味に物足りなさを感じたら、塩ではなく、しょうゆを少量加えるとよい。

 

長ねぎさえ入れなければ、保存食だけでまかなえるので、
買い物に出たくない時に重宝するのだが、
長ねぎの有無が味を大きく左右するので、ここは譲れないところだ。

 

なめたけの甘みが限りなくやさしい、
和風、まさに和み風と呼びたいパスタである。