第38の皿 空を見ていると、ワンタン

季節は秋をスキップして、いきなり冬に突入した感もあるが、
ひんやりとした風を頬に受けながら雲を眺めていると、
ふと受験生だった頃を思い出すことがある。

 

もとより学習に身を入れるタイプではないので、
勉強はほとんどしていなかったのだが、
そこは受験生であるから、早寝するようでは家族から心配される。
根っからの宵っ張りでもあり、堂々夜更かしライフを満喫していた。

 

夜更かしと言えば、夜食である。
受験勉強はしないくせに、ここだけは外さない。
基本的に、昼食と夕食以外はセルフサービスの家庭だったので、
深夜に部屋の扉がノックされることもなく、自力で用意するしかない。

 

お湯を沸かすだけで済むカップ麺やカップ焼きそばが大半だったが、
たまの楽しみとして、ワンタンを食べることがあった。
ワンタンと言っても、フリーズドライの肉入りワンタンと粉末のスープの素が
パックされただけのインスタント品なのだが、これが妙にうまかった。
お湯で戻すだけのカップ入りワンタンは、まだ出ていない時代である。

 

鍋でスープを作り、ワンタンを放り込んで少し煮る。
それをラーメン丼に注いでレンゲを添えるだけなのだが、
カップ麺にはない手作り感がよいのだろう。
開かれることのない参考書が積まれた学習机にお盆を置き、
深夜ラジオを聞きながら食す。
これで勉強さえすれば、完璧な受験生だったのだが。

 

今回は、当時を懐かしんで、ワンタンのレシピを。

 

ワンタン(2人前)

 

ワンタンの皮 20枚

 

〈餡〉
豚ひき肉 150g
片栗粉 大さじ1
おろししょうが 小さじ1
塩 少々
しょうゆ 小さじ2

 

〈スープ〉
水 1000cc
しょうゆ 大さじ2
鶏ガラスープの素 小さじ2
酒 大さじ2
長ねぎ 1/2本(上半分・小口切り)

 

  1. 餡の具材をボウルに入れて練る。
  2. 皮を手に取って縁に水を塗り、斜めに置いた皮の中央部に餡を少なめに載せ、三角形に折り、底辺以外の2辺の中央部分をつまみ、重ねてひだを作る。
  3. 小鍋に作っておいたスープに入れ、2〜3分煮る。

 

今も夜更かしは好きだが、深夜にこんなものを食べていたら、
体重は増えていく一方なので、さすがにもう夜食としては楽しめない。
初冬の空を見上げながら、受験生時代は遙かなりと実感する昨今である。

 

空を見るとワンタンを思い出す理由は、もうひとつある。
ワンタンは、「雲呑」。
雲を呑む、と書くのである。