第34の皿 丑の日の煮穴子

日本のコピーライター第1号は誰なのか、ご存じだろうか。

 

その人物は、夏に鰻を食べる習慣を定着させ、
季節の風物詩にまで押し上げたと言われている。
鰻は本来、秋から冬が旬なので、夏の売り上げはさっぱり。
どうにも困った鰻屋の主人がその人に相談したところ、
「本日丑の日」と書いた紙を店先に貼るように勧められたという。
これが当たりに当たって、お店は大繁盛。
それを見た他の鰻屋が続々真似るようになった、という話である。

 

かねてより、丑の日には「う」の付く物を食べると夏負けしないという言い伝えがある。
それまでは梅干しや瓜が食べられていたそうだが、
それらに比べて鰻は、ビタミンA・B群が豊富で滋養強壮作用に優れているため、
暑い夏の食べ物として見直されたということなのだろう。

 

このエピソードをもって、「本日丑の日」は本邦初の商業コピーであり、
その書き手こそがコピーライターの草分けである、とされているのだ。
その人物の名は、平賀源内。

 

蘭学者にして医学者、発明家にして事業家、
戯作家、浄瑠璃作家、画家、俳人、日本初の博覧会プロデューサー。
肩書きコレクターと呼べるほどの才能にあふれた、
江戸時代のスーパーマルチクリエーターの彼だが、
同じ業界の偉大なる先達でもあったわけだ。

 

「丑の日に鰻」は、現在まで200年以上も続いている超ロングヒットキャンペーン。
いやはや、スケールが違いすぎるにも程がある。
翻って、平成のコピーライターは、大先輩に敬意を表しつつ、
値段が高くて食べられない鰻に代わって、穴子を調理してみる。

 

煮穴子

 

刻み穴子 1パック

 

酒 大さじ2
みりん 小さじ1
しょうゆ 小さじ1
水飴 小さじ1

 

粉山椒 お好みで

 

  1. フライパンに調味料を入れて煮立たせる。
  2. 穴子を加えて煮る。
  3. お好みで粉山椒を振り掛ける。

 

刻み穴子は、穴子の白焼きを1cm幅に刻んであるもので、
たれが付属していることが多いが、このたれは使わずに自前の調味料で作る。
熱いたれに絡めて粉山椒を振れば、鰻の蒲焼きより上とは言わないが、
これはこれでなかなかのものである。

 

昨今、鰻を食べようと思えば、ふところはたちまち涼しくなるが、
穴子は比較的お財布にやさしい。
家計の夏負けを防いでくれるのである。