第31の皿 思い出はセピア色、いか墨のパスタ

色が褪せて薄い褐色となった、モノクロの古い写真。
遠く過ぎ去った昔が焼き付けられた写真は
よく「セピア色の思い出」などと形容される。
そのせいか、セピアという言葉の響きは、
どこかノスタルジックでちょっぴり感傷的な気持ちを誘うものだった。
・・・セピアの語源を聞くまでは。

 

セピアとは、「コウイカ」を意味するラテン語で、
その墨から作った暗褐色の顔料や、いか墨そのものを指す言葉である。
このインクで描く絵や文字は、日光などで色が褪せる。
こうして生まれた薄い褐色こそが、セピア色の正体なのだ。

 

いや別にセピア色は、正体を隠して皆を騙そうとしていたわけではないから、
「正体なのだ」などという糾弾は、完全な言いがかりである。
だがしかし、「いか墨色の思い出」という言葉に
郷愁やセンチメンタルを感じていた時間を返してほしいという思いは否めない。
昔、「一世風靡セピア」というグループがあったが、
こちらに関しても同じように残念な気持ちでいっぱいである。

 

そんな、いか墨だが、食べ物としてはパスタが有名だ。
パスタの本場イタリアの古都ヴェネツィアの代表的な料理として知られている。

 

いか墨のパスタ(2人前)

 

パスタ  160g

 

やりいか 1杯(皮をむいて輪切り)
いか墨ペースト(市販品) 5g

 

オリーブオイル 大さじ2
にんにく 2かけ(みじん切り)
赤唐辛子 1本(みじん切り)

 

アンチョビ ひれ2枚
白ワイン 大さじ4
こしょう 少々

 

パスタのゆで汁 少々

 

  1. にんにく、赤唐辛子をオリーブオイルとともに弱火でじっくり炒める。
  2. いか墨ペーストとアンチョビを加え、白ワインでのばす。
  3. いかを加え、軽く温める。パスタのゆで汁を加える。
  4. ゆでたパスタを絡め、こしょうで調味する。

 

本当は、新鮮ないかを捌いて墨袋を取り出し・・・と出来ればよいのだろうが、
市販の「いか墨チューブ」でも十分おいしくできる。
「いか墨、いか内蔵、塩、酒」のみで作られているそのチューブを使うと、
すでに塩気があるので調味料としての塩は不要である。

 

セピア色の思い出。
今後は、このパスタのことしか思い出さなくなりそうだ。