第17の皿 真冬にアツアツ、白菜獅子頭

台湾は台北の、中心部から少し外れたところに、
家庭料理を売りにした店がある。
スタッフは、すべて女性なのだが、全員が2〜30年ほど前の「若い女性」。
ステンレスで設えた厨房は清潔で広く、みんな白い割烹着姿なものだから、
どこか給食室のような雰囲気が漂っていた。

 

コースメニューはなく、もやしの炒めやチリウインナーなど、
作り置きの前菜をつまみながら、料理を待つ。
はまぐりの炒め、しいたけと豆腐入り鍋、たけのことそらまめの炒め、
野沢菜&えび入りラーメン、卵入り炒飯など、
家庭料理の店だから、高級なものは一切入っていない。
一般家庭で使われるおなじみの食材ばかりで、
ちゃんとした「お店の味」を作り出しているのだ。

 

この店で頼む料理には、何ひとつハズレがない。
なので、宿泊するホテルからMRT(地下鉄・モノレール)を二度乗り換え、
徒歩を含め片道30分を掛けて、合計3回通った。
通常、旅行の短い滞在中は、なるべく多くの店を回りたいものだから、
同じ店を続けて利用することは、めったにない。
だが、他の店でハズレを引くくらいなら、この店でアタリを引き続けたい。
メニューにある料理を、なるべく多く試したくなる店なのだった。

 

そんなこの店で、行く度に必ず頼んだ料理がひとつある。
白菜と肉団子だけを1人前用の小さな土鍋で
グツグツと煮込んだ、シンプルな一皿。
「白菜獅子頭」と呼ばれている店の名物料理は、
白菜の甘みがとてもやさしい、滋味あふれるおいしさである。

 

白菜獅子頭

 

白菜 1/4株(ざく切り)
薄力粉 大さじ1
ごま油 大さじ1

 

〈肉団子〉
豚ひき肉 300g
長ねぎ 1/2本(みじん切り)
卵 1個
片栗粉 大さじ1
おろししょうが 小さじ1
塩 小さじ1/2
しょうゆ 小さじ1/2
オイスターソース 小さじ1

 

〈スープ〉
水 200cc
塩 小さじ1
鶏ガラスープの素 大さじ1
酒 大さじ2
白こしょう 少々

 

  1. ボウルに肉団子の材料を入れて、よくこねる。
  2. 4分割してそれぞれを野球ボール大に丸め、空気を抜いてから薄力粉をまぶす。
  3. ごま油を引いた小鍋に入れ、肉団子の表面がカリッとするまで焼く。
  4. 小鍋にスープの材料と白菜を加え、ふたをして30分ほど弱火で煮込む。

 

調理法や味付けは例によって推測だが、試行錯誤の末、
記憶している味にはかなり近づいたと思っている。
肉団子は、面倒なのとカロリーオフのため、
少量の油で揚げ焼きにしたが、実際には揚げているはず。

 

その揚げ立てをしっかり煮込んで、アツアツの状態でいただくわけだ。
亜熱帯気候の台湾では、冷房の効いた店内で食べることになるが、
白菜鍋の食べ方としては、やや風情に欠ける。
本家には悪いが、日本の真冬にこそふさわしい、温かさである。