第14の皿 秋を味わう、さんまの蒲焼き

短い秋である。
私が生まれ育った南関東地方ではかつて、
四つの季節はほぼ均等に三ヶ月周期で巡っていたような気がするのだが、
近年では春と秋はそれぞれ、夏と冬の間に申し訳程度に挟まっているという印象である。
あいさつも大抵「暑いね」「寒いね」のどちらかで済んでしまい、
「いい季節だね」と言える機会がほとんどなくなっている。
日本は、二季になってしまうのだろうか。

 

それでも、食べ物の旬は、ちゃんと季節を守ってやって来る。
秋はいろいろなものがおいしくなるが、
この季節の風情を特に感じさせてくれるのは、さんまである。
当て字ではあるが、秋刀魚という文字が、
季節を背負って立つエースの誇りを漂わせて頼もしい。

 

さんまと言えば、思い浮かぶのは、やはり塩焼き。
こんがり焼いて、すだちを搾り、大根おろしを添えて、しょうゆをひとたらし。
まさに秋の醍醐味だが、我が家ではあまりこの食べ方をしない。
グリルの後片付けが面倒だし、大根をおろすのもひと仕事だからだ。
では、どうするのか。
三枚におろしたものをフライパンで焼き、調味料を絡めて蒲焼きにするのである。

 

さんまの蒲焼き

 

さんま 2尾(三枚におろす)

 

しょうゆ 大さじ1
みりん 大さじ1
砂糖 小さじ1(あれば、水飴)
片栗粉 少々
サラダ油 大さじ1

 

粉山椒 少々

 

  1. 三枚におろしたさんまに塩(分量外)を振り、10分置いてから水気を拭き、片栗粉をまぶす。
  2. サラダ油を引いたフライパンに1を皮目から入れ、アルミホイルでふんわりと覆い、弱火で3分焼く。もう片面も同様に焼いて、取り出しておく。
  3. 小フライパンに調味料を入れて煮立たせ、2を戻し、弱火で1分ずつ両面を熱して調味料を絡める。
  4. 適当な長さに切り、粉山椒を振り掛ける。

三枚おろしの方がよほど面倒と思われそうだが、
魚を捌けない私は、すでに三枚におろされたさんまを買ってくる。
おろしたものがなかった場合でも、魚屋さんはもちろんのこと、
スーパーでも鮮魚売場のスタッフにお願いすれば大丈夫。
たとえ「50%引き」のものでも、気持ちよく応じてもらえる。

 

片栗粉をまぶしてカリッと焼いたものを、小フライパンで調味料に絡める。
すると、片栗粉が溶け出して、極上のタレになる。
このタレを、炊きたてのごはんにかけて、
蒲焼きを載せれば、たちまち丼が出来上がる。
また、にゅうめんに載せて「にしんそば風」にするのもよい。
もちろん、そのままでも最高のごはんの友だが、
何で食べるにせよ、粉山椒をたっぷり振るのがおすすめである。