第1の皿 シズルの極み、カレーヌードル

誰もが空腹を抱える夜のオフィスで静かな注目を集めるのは、
どこかの席から漂い出す夜食の香りだ。
食欲が刺激される食べ物はいろいろあるが、
私が認定する破壊力No.1フードは「カレーヌードル」。
カップ麺にカレーの具が載った、アレである。

 

なにしろ、匂いの発信力が抜群だ。
揮発したスパイスがまき散らす香りは、
人をたちまちエスニックな世界に引きずり込む。

 

さらに悩ましいのは、音だ。
麺をすする「ズルズルズルッ」という響きは、
遠くからでも実によく届く。

 

シズル感という、我が業界から広まった言葉がある。
肉が焼けて汁がしたたり落ちるさま〈sizzel〉から、
食欲をそそる表現全般を指すのだが、
深夜の広告会社は、今やリアルなシズル感でいっぱいである。

 

だいたい、カレーもラーメンも、
これが嫌いという人に出会ったことがない、国民食の双璧。
ピンで勝負できるこの両者が、
組む必要もないのに合体するというのだから、
逆らえるわけがない。
そのうえ、ユーザー自身が匂いと音で
強力なデモンストレーターと化すのだから、始末が悪い。
つくづく、すごい発明だと、あきれる限りである。

 

さて、当コラム。何を思ったか料理に目覚めたコピーライターが、
広告アタマを活かしたり活かさなかったり、
そもそもそんなアタマがあるのか疑われたりしながら
編み出したレシピを紹介していく。
今回のカレーヌードルは、通常のカレーには見られない、
あのキュービックな具材がポイントだ。

 

カレーヌードル(2人分)

 

豚ひき肉 50g
片栗粉・しょうゆ・こしょう 各少々(お好みでおろしにんにくも)
ごま油 少々

 

じゃがいも 1/2個(1cm角切り)
たまねぎ 1/2個(粗みじん切り)
にんじん 1/4本(1cm角切り)
しいたけ 1枚(1cm角切り)
いんげん 2本(1cm幅切り)

 

サラダ油 少々
白ワイン 大さじ2
コンソメの素 1/2個(固形なら刻む)
カレー粉 小さじ1
片栗粉 小さじ1(水大さじ1で溶く)

 

生中華麺 2玉(あれば平打ち麺を)
市販のスープの素 2袋
熱湯 1000cc

 

  1. 豚ひき肉に片栗粉、しょうゆ、こしょうを振り、
    包丁で叩きながら1.5cm角のダイス状に成形し、
    ごま油を引いたフライパンで焼き目が付くまで
    しっかりと炒め、取り出しておく。
  2. フライパンにサラダ油を引き、刻んだ野菜をよく炒める。
    白ワインとコンソメの素を加えてアルコール分を飛ばす。
  3. 1を戻し、カレー粉を混ぜてから火を止め、
    水溶き片栗粉でとろみを付ける。
  4. 丼に熱湯を入れ、スープの素を溶かしておく。
    鍋で生中華麺をゆで上げて丼に入れ、具を手早く載せる。

 

お湯を沸かして3分待てば食べられるカップ麺を
わざわざ1時間かけて作る、なんともスローなレシピだが、
この「リアル」なカレーヌードルには、
フリーズドライとはまた違ったおいしさがある。

 

袋入りインスタントラーメンでもたぶんおいしく出来るが、
味の違いがよりはっきりわかるので、生ラーメンを推奨。
スープは、塩味が合うと思うが、しょうゆ味でもよい。
食べ始めは単なる「ラーメンのカレー載せ」だが、
次第にスープと具材が混ざり合い、
「カレーヌードル」になっていくので大丈夫。
野菜は、そのままでも食べられるところまで炒めないとうまくない。
特にじゃがいもはじっくり火を通して、フライドポテト状にしておくこと。

 

このカレーヌードル、
街のラーメン屋のメニューにあっても、そこそこウケるはず。
それくらいの味である。