豊島園の日々

先日、中高時代の同窓会がありました。
と言っても故郷に帰って参加するわけではなく、東京で開かれる会。
毎年1回、関東近郊在住の同窓生が集り、
参加者は多い時でも30人ぐらい、
今年はほんの10人ぐらいのこじんまりとした会でした。
わたし自身も参加したりしなかったり、適当な感じで、
旧交を温め合っています。

 

そしてその同窓会に参加する2日前には、
とあるライブハウスで、
昔好きだったバンドが出るイベントに参加していました。
そのバンドのフロントマンであり、MCをしていたサエキけんぞうという人が
80年代の彼らにまつわる音楽シーンの話をしていた時に、
何かのエピソードに触発されて、バンド結成のきっかけや、
先輩ミュージシャンの話、仲間たちの話を次々と語り始めました。
「ひとつ記憶の扉が開くと、呼び水になっていろいろな事を思い出す」と
言いながら。

 

同窓会に出たり、昔のバンドの音楽を聴いたり、
相変わらず過去を振り返ってばかりの毎日ですが、
今回「遊園地」というお題を与えられて、わたしにも開いた扉があります。

 

大学1年の時、
文学部のわたしたちのクラスメイトは45人ぐらい。そのうち男子は6人。
東京に出て彼氏とかつくってキラキラ、ドキドキ、ワクワク、
そしてドロドロしたキャンパスライフを送ろうと思っていた、
女子校育ちだったわたしは結構がっかりしたことを覚えています。
最初のオリエンテーションの時、
出席番号順に座らされたわたしの後ろの席にいたA君は、
くっきりとした二重まぶたの目が印象的な、
齧歯類のようなかわいらしい男の子でした。
プリントを渡したり、授業の取り方の話をしたりするうちに、
何となく口をきくようになりました。
大学のクラスはもちろん高校の時とは違って、
すべての授業を共に受けるわけではありませんが、
1年の時の必修の英語の授業はみんな一緒で、顔を合わせているうちに
地方出身者で同じように下宿生活をしているMという女の子と仲良くなり、
その辺をきっかけに何人かの女友達ができました。
クラスの男女合わせて7、8人で飲みに行った時(その頃は今ほどうるさくなかったので、大学生1年生は飲酒してました。すいません)、
普段は口数の少ないA君は、アルコールのせいか饒舌になっていました。
福島出身の彼は、ひどく訛っていて、イントネーションから単語から、
何を言ってるのかよくわからないぐらいで、
一緒にいた他の男子がからかったりしていました。
彼が大人しく口数が少なかった理由はこの辺にあったのかもしれません。
半年後ぐらいには授業で見かけなくなり、しばらくしてから
大学を辞めたらしい、という噂を耳にしました。
事情はともかく、せっかく入った大学を辞めてしまう人もいるんだ、と
わたしは驚き、その行動はなぜかひどく大人じみたことのように思えました。
そのせいか彼のことは今でも忘れていません。
10代の終わりに、ほんの半年ぐらいすれ違っただけの人なのに。
西武池袋線の「豊島園」という駅に下宿していた彼は、
今頃どこでどうしているのでしょうか。
どういう別れ方をしても、
今ならずっとSNSでつながっていたりするのでしょうが。

 

A君を見かけなくなってから、
わたしは同じクラスにいた別の男子と交際を始め、
念願だったキラキラ、ドキドキ、ワクワク、そしてドロドロした
キャンパスライフを送ることになり、豊島園に行ったり、
当時できたばかりの東京ディズニーランドに行ったりもするのですが、
その話はまたいつか。

 

そう言えば、先日の同窓会であみだくじでハズれ、
来年の幹事をすることになってしまいました。
誰かよいお店を知りませんか。
「豊島園」に集るのもいいかもしれません。