詰め替える日々

この6月1日の未明に、15年間同居していた、義理の母が亡くなりました。
昨年の9月からはずっと入院生活でした。
わたしと義母との15年の
紆余曲折、悲喜交々、一触即発、大同小異、因果応報、森羅万象に
ついては、いずれ小説化して、
そのうち宮藤官九郎脚本で連続ドラマにしてもらうつもりです。
NHKの朝ドラとはいいません、日テレかフジの昼の枠でいいです。
詳細はそちらをご期待ください。

 

とまれ、義母の部屋の荷物を整理していたら、
それはそれはまあ、いろいろなものが出てきました。
また、それについては、それだけで、
いずれ断捨離についての啓蒙本を出版するつもりですので、
詳細はそちらをご期待ください。

 

雑多なものの中に、花王から出ているアジエンスというヘアケアシリーズの、
なぜかコンディショナーだけが2本ありました。
まだ中身もたっぷりあります。使える、もったいない。MOTTAINAI。
やりくり上手の賢い奥さんであるわたしは、
シャンプーだけを買い足してセットにして使おう、と思いました。当然です。
そして休日、買い出しに近所のドラッグストアへ、
トイレットペーパーだの、詰め替え用の洗濯洗剤だの、
詰め替え用の柔軟剤だの、詰め替え用の食器洗い洗剤だの、
こまごまとした日用品を思いつくまま買い込みました。
あ、そうだ、忘れちゃいけないアジエンスも。

 

そしてたっぷりの荷物を抱えて帰宅し、ひとつひとつのアイテムを
所定の場所におさめようとしていた時に事件は起こりました。
わたしが買ったアジエンスのパッケージには、
コンディショナー、と大書してあったのです。
それを目にした時の驚き、たるや。
そして、しばらく後に襲ってきた悲しみ、たるや。
前者は、そんなことあり得ない、という純粋な驚き。
後者は、そんな間違いをやらかすなんて自分も老いてしまったものだ、
という深い悲しみです。

 

そもそもわたしが使っていたシャンプーは違う銘柄なのに、
我が家にはアジエンスのコンディショナーだけ3本になってしまいました。
今度こそシャンプーを買わなければ…、
しかし、そのプレッシャーに負けて、
またコンディショナーを買ってしまったらどうしよう。
ひょっとしたらトリートメントを手にしてしまうかもしれない。
もしかしたらTSUBAKIをカゴに入れてしまうかもしれない。
ああ、もう一生髪の毛を洗えないかもしれない。

 

その恐怖と、じめじめと湿気た陽気のせいか、
最近体調がすぐれません。調子が悪いです。
もしも、もしも、今わたしが死んだら、
わたしの荷物は誰が整理してくれるんでしょうか。
大量にストックしてある詰め替え用洗剤を、
誰が正しく詰め替えてくれるんでしょうか。
ああ、人生って詰め替えることができるんでしょうか。

 

こんな体たらくで、断捨離なんてちゃんちゃらおかしいですね。
啓蒙本なんて書けるはずもありません。すいませんでした。
でも連ドラ化だけはよろしくお願いします。
わたしたち夫婦の役は、実際の夫婦である壇れいと及川光博でいいと思います。
夫婦初共演、きっと話題になるはずです。
義母の役は、パリの叔母さま岸恵子で。
アジエンスのエピソードも入れてもらって、スポンサーは花王の一社提供で。
主題歌は玉置浩二に引き受けてもらってください。