期限の日々

2016年の大晦日、出かける予定があったので、
年末にHDDを買いました。
リアルタイムで視聴することのできない「紅白歌合戦」を録画するためにです。
それまで我が家には何年か前に壊れてしまったプレステしかなく、
テレビ番組を録画できない状況にありました。
どうしても観たい番組があれば、その時間に家に帰るか、
ネットに落ちている動画を探すしかありませんでした。
流行っているドラマや歌番組も、
平日に放送しているものはほとんど観ることができないので、
ネットやSNSの評判を見ては、
何となく知ったようなことを言ったりしていました。
本当にちゃんと観ていたのは日曜日の「真田丸」だけでした。すいません。

 

今さらHDDを手に入れて、
2017年のわたしのテレビ視聴環境は大きく変わりました。
今までは気にしなかった番組表を眺めては、
いくつかのドラマや気になっていた番組を録画予約して観ています。
その中のひとつに、
東村アキコのコミックが原作の「東京タラレバ娘」があります。
アラサーの三人娘が、夜な夜な居酒屋に集まってクダをまき、
“あの時ああしてタラ”、“こうしてレバきっと”と
嘆いたり悔やんだりしながら、
2020年の東京オリンピックまでに理想の恋人を見つけよう、
というのが大体のストーリー。

 

2020年の東京でのオリンピック開催が決まったのは、
2013年のことで、当時それは “7年後”のことでした。
そして月日は流れ、
それは今からもうわずか“3年後”のことになってしまいました。
期間限定で彼氏を見つけるのに、ちょうどいい絶妙な時間軸です。
3年という区切りは。
吉高由里子や榮倉奈々や大島優子がモテないわけない、
という突っ込みはさておき。

 

時を同じくして、
CSの日本映画専門チャンネルで「想い出づくり。」という
ドラマが放送されています。
脚本は山田太一で、
あの名作「ふぞろいの林檎たち」よりも以前の1981年に放送。
噂には聞いていましたが、わたし自身は観るのは初めてで、
実家にいた頃、大人びた同級生が
“「想い出づくり。」がおもしろいけー、見てみー”と言っていたのを
よく覚えています。タイトルに句点がついているのも昭和っぽい。
あの頃は、テレビも一家に一台、ましてやビデオデッキなど非常に高価で
一般家庭にはほとんど普及しておらず、
ゴールデンタイムには、家族揃ってリアルタイムで同じ番組を観るか、
イヤなら部屋でひとりでマンガでも読んでいるしかありませんでした。
今を生きるみなさんは、
ネットに何でも落ちている幸福をもっと噛み締めた方がいいです。

 

「想い出づくり。」が、このタイミングで放映されているのは偶然でしょうが、
古手川祐子、田中裕子、森昌子(若い方向けに説明するとすれば、
ワンオクTAKAのお母さんです。今の彼はこの頃の森昌子によく似てます)
という、当時の三人娘が
「もう私たち23歳(当時は23ぐらいで焦っていたんです)になっちゃう。
結婚するまでにいい想い出つくりたい」と、
要するにタラレバ言いながら、右往左往しているドラマです。
そう、1981年も2017年も、たとえ36年たっても、まったく同じ。
みんな自分に賞味期限をつけて(またはつけられて)、
勝手に泣いたり笑ったりしていたのです。

 

かくてHDDの中のデータは溜まる一方で、
そのために買った、去年の「紅白歌合戦」も観ていないし、
木村拓哉のドラマももう何話分かが溜まり始めました。
大河ドラマも録画はしていますが、1話も観ていません。
村上春樹も読まなきゃいけないし、「LA LA LAND」も観なきゃいけない。
何せ人生自体が期間限定なので、時間がないのです。
命短し恋せよタラレバ娘、
人生はおばさんになってからの方が長い、
ということを頭の片隅に置いておいてください。

 

そしてわたしが本当にしたかったのは、毎週欠かさず観ている、
何なら同じ回を2回観ることもある「カルテット」の話です。
高橋一生の魅力大爆発、
おそらく36年後の「日本映画専門チャンネル」で放送されるであろう、
このドラマについて次回語ります。多分。期間限定で。