春の日々

制服の胸のボタンを下級生たちにねだられたことがありますか?
夜の校舎窓ガラス壊してまわったことがありますか?
瞳を閉じれば誰かがまぶたの裏にいることでどれほどか強くなれましたか?
春です、卒業です。
絶対的エース前田敦子とも、
会社を去っていく何名かともお別れです。
「センチメントの季節」です。

 

いつからか夏にブーツを履き、冬にノースリーブを着ることができるほど
季節感がなくなりました。
風邪のマスク姿と花粉症のマスク姿が混在し、
ウールのコートとナイロンのコートがすれ違うこの時期、
桜の花だけが確実に「春」という季節を告げています。

 

昨年はそれどころじゃなかったお花見も、
今年はあちこちで開催される、または既に開催されたようです。
もちろん自分もですが、人はなぜ花見をしなければ気が済まないのでしょう。
桜を観ながら、集まって飲んだり食べたりすることは
確実に日本人のDNAに組み込まれていて、
東京なら上野の山で、隅田川のほとりで、新宿御苑で、井の頭公園で、
なんなら花はそっちのけで繰り返されるどんちゃん騒ぎ。
しかしまだまだ花冷えで、夕方にはお尻の下に敷いたシートから冷気がしみ込み、
結局は寒くて座っていられず河岸を変えることになるのもお約束。
なかには桜とともに日本を北上していくつわものもいるほどです。

 

今年東京で一番にぎわっているお花見スポットは、
スカイツリーを望める場所かもしれません。
卒業があれば、出会いがあるように、新名所「東京スカイツリー」は5月22日開業。
すぐに高い所に登りたがるDNAも組み込まれているのか、
開業から当分は日時指定の予約のみ受け付けられているとか。

 

確かに一度は登ってみたい世界一の電波塔、
都内を東に向かっているとどこかの地点から急に目に飛び込んでくるあの景観は
偉業であり、異形でもあります。
見るたびに、あの高さの何倍もある巨人がいて、
ツリーのてっぺんの細くなってるところをつかんで引っ張ったら
本州ごとぐるんとまるまって地球からはがれてしまうんじゃないかと妄想します。
「進撃の巨人」の読み過ぎかもしれません。
もっともあの巨人は身長15メートルぐらいらしいですが。

 

さんざん報道されたせいか、語呂合わせのせいか、
「スカイツリーの高さは634メートル」という情報も組み込まれました。
ムサシ(武蔵)の国から来ているそうですが、
1192つくろう鎌倉幕府、以来の、一生忘れない語呂合わせです。
しかし中学や高校で語呂合わせで年号や元素記号を覚えて何年経ったことか、
いや正直、卒業してから何十周年です。
制服のボタンをねだったことも、
窓ガラスを壊したことも、
金八先生に警察を呼ばれたこともありませんでしたが。

 

卒業、入学、入社など、新しいスタートを切るみなさんおめでとうございます。
同僚も10名も増えました。
今年も無事に4月です。