数字の日々

今年のカレンダーがあと1枚になる直前、
我が家にも“マイナンバー”が届けられました。
「来た?」、「昨日来た」、「うちはまだ来ない」、「○○区は届いたらしい」、
「不在通知が入ってたんで郵便局まで取りに行ってきた」から始まり、
「管理能力のない人から先に届くらしいよ」といった届かない人の、
謎の負け惜しみまで、既にいたずらに国民をザワつかせてくれています。
そしてそこに記載されていた12桁の個人番号を見つめていても、まったく頭に入りません。
わたしという戦うボディの中にある、データ容量はいっぱいです。
i Cloudもありません。
このままではいつかきっとマイナンバー詐欺に遭ってしまうことでしょう。

 

マイナンバー詐欺に遭って金銭をだまし取られても困らないように、
今年も年末ジャンボ宝くじを買ってしまいました。
毎年“ジャンボ”と名のつくさまざまな宝くじを買っては、
「1等3億円(金額はその都度違いますが)が当たったら、会社を辞める」と
言い続けていますが、未だ勤続年数を重ねています。
第一「辞める、辞める」と言っている人は辞めません。
本気の人は寡黙です。ある日突然辞表を出しています。

 

購入した宝くじを眺めていたら、
オモテ面に“宝くじ70th Anniversary”と記載されていました。
戦後70年の今年に宝くじが発売70周年を迎えたことに、
きっと正しい相関関係はあるのでしょう。特に調べはしませんが。

 

年をとると、何だか“周年”という節目が気にかかるようになります。
わたしが今年出かけたコンサートや買ったCDにも
“○○周年記念”という看板を掲げたものがいくつかありました。
中でも白眉だったのが、この夏2日間だけ行なわれた
“松本隆作詞活動四十五周年記念「風街レジェンド」”というものでした。
つい先日BSでも放送されたのを観た人もいるかもしれません。
松本隆が詞を書いた名曲やヒット曲の数々を、
その曲を歌った歌手達が次々に登場して披露する、という
わたしたち世代には夢のようなイベントです。
ステージに次々と現れる綺羅星のようなスターたちのオーラにやられ、
一曲も歌っていないのに、観ているこっちの方が喉がカラカラになりました。
子どもの頃に親たちが石原裕次郎や美空ひばりを“懐メロ”として楽しんでいたように、
わたしも松本隆が作詞した珠玉の作品を、同じようなノスタルジーとともに
見聞きする年頃になったということです。
若い方は“松本隆”という名前を聞いてもわからないのかもしれません。
「この前コンサート行ったんだけどさあ」「誰のですか?」
「松本隆って知ってる?」「えーっと、B’zの人でしたっけ」
と、いう会話がわたしと同僚との間で交わされました。少し淋しいと思いました。
でも、きっと彼女も彼が手がけた曲を耳にしたことがあるはずです。

 

終戦直後の8月に生まれ、戦後70年である今年、同じく70歳、
古稀を迎えたタモリと、ちょうど10歳違いで今年還暦だった明石家さんま。
後者の60歳を祝うテレビ番組は数々放送されましたが、
タモリを祝福するような特別な番組はなかったように記憶しています。
両者のキャラクターの違いかもしれませんが、
冠番組など作らず、淡々と年を重ねているタモリに惹かれます。
長年続いたお昼のレギュラー番組がなくなって自由になり、
NHKの「ブラタモリ」で水戸黄門のように諸国を漫遊しているタモリを見ていると、
こちらも旅情をかきたてられ、いつも
“タモリのようなおばさんになりたい”と強く思うのです。

 

松本隆のコンサートの終わり、
この日のために再結成されたはっぴいえんどの盟友・細野晴臣と
「50周年もやりたいね」という会話が交わされました。
45周年なんて半端だなあ、と思っていたけれど、
年をとると10年、という区切りは長いです。
5年後の自分を思い描ける、健康体でいたいし、いてほしいと思います。
“マイナンバー”よりももっと、心に留めておきたい数字がいくつもあるのです。