交代の日々

“ちゃんちゃらすちゃらかすっちゃっちゃーん”の
陽気なテーマソングでおなじみですが、日曜の夕方、
この番組をリアルタイムで観ていると
「週末が終わってしまう。ああ、また明日から会社だな」と
思って物悲しくもなる人気番組『笑点』。
スタートしたのは1966年、昭和41年だそうですから、
今年で放送開始50周年を迎える長寿番組です。
この5月、番組開始当時から大喜利メンバーとして出演し、
近年は司会を務めていた桂歌丸師匠が勇退、
新司会者には万年独身青年、
しかしああ見えて56歳の春風亭昇太師匠が抜擢されました。

 

さすがに放送開始当時のことは覚えていませんが、
歌丸(以下すべて敬称略)は
小学生のわたしが初めて見た時からおじいちゃんでした。
子ども心にマジメな歌丸と、
キザな小円遊の口ゲンカのような小気味のよい言葉の応酬が好きでした。
あれから数十年、彼はずーっと同じおじいちゃんのまま79歳になり、
『笑点』を去っていきました。わたしは小学生からおばさんになりました。
そして奇しくも同じ日、『笑点』が終わってから始まる、
アニメ『ちびまる子ちゃん』の主人公まるちゃんのお姉さん役の声優さんが
51歳という若さで亡くなり、最後の収録分が放送されました。
翌週から新しい声優さんに変わりました。
二つの交代劇が交差した、日曜の夕方でした。

 

思えば、『ちびまる子ちゃん』の後の『サザエさん』も、
いつの間にか少しずつ声優が変わっています。
もうあんまりリアルタイムでは見なくなりましたが、
たまに家にいて見るともなく見ていると、
ちょっとした違和感を覚える時があります。
「マスオさん、こんな声だったっけ?」と。

 

『笑点』が始まった3年後の1969年に第一回が放送された『サザエさん』、
初回から声優が変わってないのはサザエさんとタラちゃんだけだそうです。
『笑っていいとも!』のように最終回を迎えることのできない番組は、
交代、という形で存続していくことを求められます。
『笑点』の交代劇は会社になぞらえれば人事異動いや役員改選か、
ロートルは勇退し、現役メンバーの中からふさわしい人物が抜擢され、
その空いた場所にはイキのいい若手が入ってきました
(と言っても林家三平は45歳で、そう若手でもありませんが)。
その人事移動をなぜか感慨深く眺めていた、
わたしのような会社員もいたのでは、と思います。
自分は歌丸なのか、昇太なのか、三平じゃないしな、
じゃ、たい平か、24 時間マラソンを走るのはイヤだな、とか。
新しくなった大喜利からは桂一門と春風亭一門がいなくなり、
三遊亭一門と林家一門だけになりました。
なんだか閉鎖的なキャスティングに思えますが。
昇太はいろいろな大人の事情に配慮しながら、
番組をまわしていかなければならないでしょうから、
大変なプレッシャーだと思います。
万年青年が、一気に老けてしまわないことを祈ります。
わたしが心配することではありませんが。

 

『笑点』や『サザエさん』同様、
会社もそう簡単には最終回を迎えるわけにはいきません。
こちらもいろいろな交代劇があるでしょう。
理想は出産や育児で見かけなくなっていた上戸彩のポジションに、
違和感なくすーっとおさまった石原さとみのような交代じゃないでしょうか。
上戸彩になりたいです。わたしは何を言っているのでしょうか。

 

そう言えば『サザエさん』は波平の声にもまだ慣れません。
磯野波平54歳、春風亭昇太よりも年下です。