ロング・バケイションの日々

明けました、2014年。平成26年、昭和なら89年だそうです。
門松は冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし、
という心境にもなりますが、無事に年を越せてよかったです。

 

しかし昨年末、年の瀬も年の瀬の12月31日に飛び込んできた訃報に、
本当に驚き悲しんだ音楽ファンも多かったと思います。
松本隆の追悼の言葉を借りれば、“ほんものの十二月の旅人”になってしまった大瀧詠一。
その日の夜の紅白歌合戦では急きょ大瀧詠一コーナーを設けて、
森進一は「冬のリヴィエラ」を、
小泉今日子は「快盗ルビイ」を、
松田聖子は「風立ちぬ」を、
薬師丸ひろ子は「探偵物語」を歌えばいいのに、
と思った同年代の人も多かったはず。
もちろん一分一秒の隙もなく、
緻密にスケジューリングされたNHKホールの楽屋裏では
さすがにそんなスリリングな対応ができるはずもなく。
司会に起用した綾瀬はるかのリスクヘッジだけでいっぱいいっぱいだったようです。

 

とはいえ、わたし自身も現金なもので、
あまちゃんコーナーが始まれば画面に釘づけ。
快盗ルビイも探偵物語も忘れて、
潮騒のメモリーズと天野春子と鈴鹿ひろ美の、
夜のヒットスタジオのオープニングメドレーのような「潮騒のメモリー」になぜか落涙。
虚構の「あまちゃん」がリアルの「紅白歌合戦」で大団円を迎える、という
昨年4月のドラマ放送開始時には誰も予想しなかったであろう展開にふるえました。

 

わたしにとっての大瀧詠一は“はっぴいえんど”の人ではなく、
80年代のはじめにアルバム「A LONG VACATION」を発表し、
当時の歌謡曲シーンにたくさんの良質のポップスを提供してくれたメロディメーカーです。
田舎の高校生だった頃、
放課後のたまり場だった町のレコード屋の壁一面に
ある日突然、永井博のイラストのあのジャケットがずらっと並んだことを覚えています。
大瀧詠一のことを知らずに、話し相手だった店のお兄さんに、
「なんでこーにぎょーさんこのジャケットばあ飾るん?」と尋ねたことを
昨日のように思い出します。
それはわたしにとっての上京前夜、壁じゅうのポップなジャケットのように、
未来は希望に満ちていて、
これから何かおもしろいことがたくさんありそう、
という期待に胸がふくらんだことを思い出します。

 

大瀧詠一よりも少し前の12月にももう一つの訃報がありました。
無期限活動休止中のムーンライダーズのドラマー かしぶち哲郎です。
自分が若い頃に影響を受けたカルチャーの人が、だんだんと彼岸に旅立ってしまう。
年をとるというのは、
こちらよりあちらの方が楽しそうに見えるということだとも思います。
昨年亡くなった父のいない、がらんとした実家で、
来し方行く末について思いを巡らせた2014年のはじまりではありました。
いつかはみんな永遠のロング・バケイション、
大瀧詠一しばりでカラオケに行く人を募集しています。
やしきたかじんもアリです。

 

今年もよろしくお願いします。