フェスの日々

とある土曜日の夜、昼間に針治療に行った疲れか、
急に降り出した雨のせいか、何もやる気にならず、
ぐったりと横になって、Twitterを眺めていたら、
「コーネリアスを途中で捨てて、ホワイトステージのオザケンに向かい中」
とか「オザケン地蔵がどかない」、「ホワイト入場規制かかった」といった
ツイートがタイムラインに流れてきて、
ああ今日はFUJI ROCK FESTIVAL(以下フジロック)なのか、
そう言えば小沢健二が初出演するんだったなあ、ということをぼんやりと
思い出していました。

 

コンサートや舞台は結構観に行く方ですが、
いわゆるフェス、というものに行ったことがありません。
わたしの中のフェス感は、
映画「モテキ」の長澤まさみのファッションに集約されています。
天候が変わりやすい野外フェスに参加するなら、
ポップな色の帽子やパーカー、ショートパンツ、スパッツ、
レインブーツを新調しなければ。長澤まさみなら、
首に巻いたタオルさえもおしゃれです。
わたしだったら野良仕事です。
入場するためには、チケットだけでなく、フェスの制服である、
そういったファッションを身につけていなければならないような気がします。
ハードルが高いです。体力が持つかも心配です。

 

若い頃、10歳ぐらい年上の会社員と待ち合わせをしたことがあります。
平日に会うときはいつもネクタイをしめたスーツ姿だったのに、
休日の彼は普段着で待ち合せ場所に現れました。
普通のセーターにコットンパンツかなんかをはいていたような気がしますが、
それが何ともダサく見え、がっかりしたことを覚えています。
会社員の制服であるところのスーツが、彼を何割か増しに見せていたのです。
待ち合わせにもスーツで来てくれ、と心から思いました。
そしてまたその逆もあり、普段はカジュアルな格好ばかりの同僚が、
誰かの結婚式か何かでフォーマルなスーツに身を包んでいたりすると、
ちょっといいな、と思います。
ただのネクタイ萌えかもしれませんが。

 

制服のある仕事に就いたことがないので、
学校の制服以外の制服を着たことがありません。
今のところ着る予定もありません。
しかし最近読んだ林真理子の「我らがパラダイス」という
老人介護をテーマにした小説に、
高級老人ホームで働く50代の主婦がそのホームで着用する制服にまつわる
エピソードが書かれていました。
“地下鉄の窓ガラスに映った自分の制服姿は、
20代の女性のそれとは違って、なんてくたびれて見えるのか”とかなんとか。
仮にわたしが職を探すことになって、
制服のある仕事に就かなければならなくなったら、
と何となく自分の身に置き換えてぞっとしました。
しかしそんなことを言っていられるのは、
これでもまだわたしが若く健康だからで、
いつかは小説に出てくるような老人ホームに入って、
お遊戯をしたり、童謡を歌ったりするのでしょうか。
そちらの方がよっぽどぞっとしますが。

 

しかしわたしが老人ホームに入るような時代に歌う童謡は、
フジロックの小沢健二のステージの1曲目、
スチャダラパーを伴って歌ってい大いに盛り上がった
「今夜はブギーバック」かもしれません。
誰かがアップした、右手を上げて左右に揺れている観客の映像を見ていたら、
そんな気になりました。
ブギーバックが発売されたのが1994年、もう23年も前のことです。
たとえば23年後、生きていたら右手を揺らしながら、老人ホームでブギーバック、
それは何フェスかはわかりませんが、そちらの方がもっともっとぞっとします。