カープの日々

暑いですか。暑いですね。暑いですね。暑いですね(以下繰り返し)。
毎日がビニールハウスの中にいるような気候のせいで
抜け毛が増えてしまったのか、
Kinki Kidsで、堂本兄弟である二人が、発毛促進薬のCMに出始めました。
何年か後に振り返った時、
ああ、あれが本格的な高齢化社会の幕開けだったんだなあ、
と思い出すことになるエポックなCMになるでしょう。
2015年、何も言えなくて…夏、覚えておいて損はないと思います。

 

この話をしたら、
「オレは何年か前、稲森いずみが白髪染めのCMに出た時に同じようなことを思った」と言った
男性がいました。
発毛促進薬と白髪染め、
若い頃はイケイケ(死語)だった男と女、その間に流れていた深い河も、
今は年月を経て、浅くゆるやかになり、対岸が近くなったのかもしれません。
これからは同じ河のほとりで髪の毛を洗い合い、
いたわり合って暮らしましょう。

 

夏になると思い出すエピソードがあります。
「AKMさん、AKMさんは巨人ファンなんか。それじゃったら降りてもらうで」。
その言葉を聞いたのは、わたしがまだ中学生の夏休みでした。
友達のお父さんの車に乗せてもらって、家まで送ってもらう途中、
たまたまカーラジオからは、スローバラードでなく、
「巨人×広島戦」の中継が流れていました
(ちなみに広島では当然「広島×巨人戦」と言います)。
その頃のわたしは野球などよくわからず、
もちろんどこの球団のファンということもなく、
ただ所在なく後部座席にいたため、
ラジオから流れてきた、アナウンサーの「○○がホームランを打ちました」、という実況に反応して、
何も考えずに、何なら場の空気を和ませようと、
“やったー、ホームランだー”とつぶやいてしまったのです。
ところがそのホームランを打ったのは巨人の選手で、
広島東洋カープは逆転されてしまっていたのでした。
そうです、生粋の広島県民である友達のお父さんは、筋金入りのカープファン。
運転席から振り返って、広島弁で、
「巨人ファンなら降りてもらう」と真顔で言われたのですから、
中坊のわたしは、それはもうビビりました。
それからです、あまり知らない人の車に乗って、
無闇に野球と政治の話をしてはいけない、と肝に銘じたのは。

 

今年のカープは、広島県民は、ペナント前から湧きに湧いていました。
そうです、男気・黒田です。
メジャーリーグから、20億?とも言われる年俸を蹴って、
日本野球界、しかも古巣のカープに復帰。
それだけでもう、広島県内は優勝したかのような騒ぎ、だったらしいです、
地元の友達によると。
その時、わたしも今年は真剣にカープファンをやろうと決めました。
しかしそこで盛り上がり過ぎたのがよくなかったのでしょうか。
8月後半現在、カープはセ・リーグ4位です。
史上空前の団子レースとはいえ、ちょっと残念です。
やはり生粋のカープファンの友達のダンナは、
「もういけん、わしゃあ、カープファンを辞めた」そうです。

 

そして元広島県民でありながら、にわかファンもいいところのわたしは、
現役のカープ選手の中に、自分と同じ名字の選手を見つけました。
もちろん縁もゆかりもありませんし、どんな選手かもよく知らない。
しかし、そんなによくある姓でもないので、
自分の名前を背負うのってなんだかかっこいいかも、という
極めてミーハーな気分だけで、その選手の名前の入った
真っ赤な応援用のユニフォームを衝動的にネット注文してしまいました。
ついでにマフラータオルも。
カープのユニフォームを買ったのなんて生まれて初めてです。
先日届いたそのセットを、冷静に眺めていると、
何となく気恥ずかしくなりました。
KURODAやMAEDAやDOHBAYASHI、でなく、なぜその選手。
これを羽織って球場に行く機会はあるんでしょうか。
選手の名前すらよく知らなくて、
そもそもわたしはカープファンなんでしょうか。

 

中坊だった頃よりもっと前の、小学生の頃、
アニメの「ど根性ガエル」が始まりました。
わたしはファーストど根性ガエル世代です。そんな世代はありませんが。
平面ガエルという設定の妙、魅力的な登場人物たち、
そう、今の言葉で言うと、この漫画の世界観に魅了され、夢中になりました。
そしてピョン吉Tシャツが欲しくてたまらなくなり、
反対する母親に頼み込んで、近所の洋品店で買ってもらいました。
今で言うキャラクターグッズの走りです。
忘れもしません、次の日がちょうど月曜日で、
意気揚々とピョン吉Tシャツを着込んで、登校しました。
みんなにうらやましがられるだろうなあ、とわくわくしながら。

 

わたしが通っていた小学校は制服があり、
女子は自前のシャツやブラウスに決まりの紺の吊りスカート、
その上から上着を着る、というスタイルでした。
そして、その日1日、結局わたしは一度も上着を脱ぐことはありませんでした。
なぜか胸にピョン吉がいることがとても恥ずかしくなり、
休憩時間に校庭を走り回ってどんなに暑くなっても、ずっと上着を着ていました。
そしてその日以来、わたしのピョン吉はタンスのこやしになってしまいました。

 

そして、松山ケンイチが30歳になったヒロシを演じている今年、
自分の名前が付いたカープのユニフォームも日の目を見ないまま、
同じ運命をたどるような気もします。
ただこの暑さのせいで、マフラータオルだけは実用しています。
首からぶら下げたそのスタイルは、応援というよりは、野良仕事。
カープ女子というよりは、カープ婦人です。
クライマックスシリーズに進出するようなことがあったら、
ユニフォームを着て球場に行こうと思います。