やばい日々

甥がいます。
「大きくなったらなにになるの?」「しまうまー」と、
元気にこたえていた彼も、
色黒で手足だけひょろ長い小学六年生になってしまいました。
わけのわからない替え歌を歌いながらトイレに入ったり、
ザリガニを獲ろうとしてドブ川に落ちたり、
白い紙を見つけると延々と出口のない自作迷路を書き続けたり
することもなくなりました。
わたくしの大好物の小学校低学年男子ではなくなりました。
成長ではありますが、少し残念です。
低学年男子萌えとしてはその代替案として、
五代目市川團子8歳を追いかけることにしました。

 

先日生まれて初めて自腹で、1万5千円も払って
新橋演舞場に「六月大歌舞伎」を観に行きました。
何十年か後に
「あたしはねぇ、猿翁と猿之助と中車の三代同時襲名と團子の初舞台を観たんだよ。
そりゃあもう華やかだったねぇ。それに比べると新しい○○○はまだまだだねぇ」
と同じ昔話をいつまでもし続ける厄介なばあさんになるために。
とうとう歌舞伎にまで手を出してしまいました。
香川照之こと九代目市川中車の梨園入りを契機として、
わたくしも勝手に澤瀉屋(おもだかや)びいきを襲名させていただきます。
澤瀉屋というのは歌舞伎役者の屋号のひとつで、
舞台のここぞという場面で大向こうからかかる「おもだかやっ!」などの掛け声には
観ている観客の方もわくわくするものです。
興味がある方は「グループ魂・中村屋」で検索してみてください。
あまり参考にはならないかもしれませんが。

 

もう抱っこもチューもできなくなった甥っ子に冗談ですり寄ろうとしたら、
「ムリー」と返されて、
彼が思春期のとば口に立ったことを悟りました。
ヤバくね?とか、ウケんだけど、とか言い出すのも時間の問題です。
いいも悪いも、美味しいも不味いも、おもしろいもつまらないも、
あらゆる感情を「やばい」と「うける」と「むり」のほぼ3語だけで表現できる若者たち。
子どもの頃に読んだ本に
“未来の人間は言葉を必要としなくなって、
テレパシーみたいな手段でコミュニケーションをとる”と書いてあったのを覚えています。
もう彼らは未来人なのか。
それは真の意味での「やばい」ことかもしれません。

 

「はい」、「いいえ」、「ありがとう」、「すみません」の4語だけで
亜弓さんと丁々発止の対決をやり遂げた
北島マヤ@ガラスの仮面とはわけが違います。
長いエチュードの末に、「どんな曲が好き?」と聞かれて、
レコード(これも時代です)を探すパントマイムをして
「はい!」と差し出したマヤの、今でいう、どや顔をよく覚えています。
連載開始から35年以上たってもまだ完結しない大河少女漫画。
紅天女はどちらが演じるのでしょうか。
見届けられるんでしょうか。
團子はいつか猿之助を襲名するんでしょうか。
30年後だとしたら見届けられないかもしれません。

 

ところでこの2012年7月7日にアドブレーンは創立50周年。なんと半世紀です。
ガラスの仮面よりもずっと先輩です。
おめでとうございます。
ありがとうございます。
やばいですね。ちょーウケますね。