うどんの日々

今年は4年に一度、うるう年でした。
もともと28日しかない2月に加わったささやかな1日を
有効活用したかったのですが、そうもいきませんでした。
2月の半ばにインフルエンザに罹患し、何日か会社を休みました。
有効活用するどころか、個人的にはマイナスの気分です。
長いこと勤めていますが、インフルエンザで休んだのは初めてです。
これも老化でしょうか。
もともと主人が先に罹り、39℃の熱を出しました。
うつったらやばいなあとは思っていましたが、
いっしょの家にいると逃げ場はありませんでした。
同時に会社を休んでいた期間が何日かあり、共によれよれと過ごしていました。
そしてそれはいつの日か訪れるかもしれない、
老老介護のシミュレーションをしているようでもありました。
これからはいたわり合って暮らしていけよ、というご神託かもしれません。

 

インフルエンザA型と診断された病院からの帰り道、
このまま引きこもることに備えて、当座の食糧、
なるべく手をかけなくてもよい食べ物を、さまざまに買い込みました。
結果、わたしたちを救ったのは、うどんとバナナ、でした。

 

西の方で育ったわたしはもともと断然うどん派です。
瀬戸内海をはさんで、うどん県の対岸にあるわたしたちの街には、
もちろんうどん県には及びませんが、そこかしこにうどん屋がありました。
一方そば屋の記憶はなく、東京出身でそば好きだった母は、いつも
「おいしい天ぷらそばが食べたい」と嘆いていました。
何年も前に空前のさぬきうどんブームが起こった頃には、
ご多分に漏れずうどんツアーに出かけました。
香川県をめぐる旅は充実していて、
自分でネギを刻んで薬味にして食べるひなびた製麺所、
あつあつやひやあつ、かま玉などの独特のうどん用語、
何でも揚げて天ぷらにしてしまえばおいしいトッピングになること、
サイドメニューのいなり寿司やばら寿司もあなどれないこと、
コンビニにうどんのイートインコーナーが併設されていること、
そしてとにかく値段の安さ、などを堪能しました。

 

しかしこのたびインフルエンザ患者になり、ひとつわかったことがありました。
一般にさぬきうどんの売りは「コシ」、
ピンと角が立つような格闘家のように力強いうどん、
がおいしいとされています。
しかし病人にはコシは不要、ぐずぐずとやわらかく煮込まれたうどんを
背中を丸めてずるずるとすするのが似合っています。
そこでこれからインフルエンザにかかるかもしれないみなさんに
おすすめしたいのが、「10分どん兵衛」です。
ご存知の方もいるでしょう、タレントのマキタスポーツがひろめたとされる、
食べ方。
カップ麺の「どん兵衛」にお湯を入れ、
通常の5分でなく10分待って食べるというものです。
10分たてば、麺は闘えない中年男性のようにふにゃふにゃと柔らかく、
熱湯もほどよく冷めているので猫舌のあなたでも安心です。
わたしはここにちょい足しレシピとして、生卵とおぼろ昆布を投入します。
そしてデザートには、ナイフなど不要、手で皮をむけるバナナをどうぞ。
もうインフルエンザウイルスも逃げ出す完全食です。

 

こうして我が家からインフルエンザは去っていきました。
寄る年波、季節の変わり目、体調管理には十分お気をつけください。
床に臥すのも4年に1度ぐらいにしたいです。