2017年、最後の話。

年の瀬です。
寒いです。
こんな寒い日はこたつでみかんを食べながら
どうです、マンガでも。

 

姉妹の関係性はいろんなケースがあると思うのですが、
わたしは姉の影響を強く受ける妹でした。
姉が買ってきたマンガを読み、姉が買ってきた雑誌を読み、
姉が買った小説を読んでいました。
あるいは、母が私たち姉妹に読み聞かせてくれた絵本も同じでした。
姉は本が好きで、姉が欲して買いそろえた本は
自然とわたしも読むことになります。
最初に手にした本は「こまったさん」だったか「ズッコケ三人組」だったか
はたまた「アラビアンナイト」だったか・・・。
けっこうな大人になるまで、
わたしの文化圏は姉の作ったものの中におさまっていました。

 

その中のひとつ、マンガの話をしましょう。
姉のマンガで印象的だったのは『絶愛』です。
今で言うBLというジャンルですが、
当時はジャンルのことなど理解しないまま読んでいました。
音楽業界のスターとスポーツマンの苦しく壮絶な愛…そうですまさに「絶愛」。
姉というのはえてして早熟なものですね。
いち早く、単純な異性愛を描かないマンガにも進出していました。
わたしが青山剛昌の『YAIBA!』や『名探偵コナン』を読みふけっている時、
姉は岡崎京子の『リバーズエッジ』を読んでいるような好みの差がありました。

 

本棚には本だけ、マンガはマンガの棚へ。
そういうすみ分けがなされましたが、
姉は特に気に入ったマンガは本とともに棚に並べていました。
『11人いる!』『ポーの一族』『トーマの心臓』など
萩尾望都のマンガがそこに揃っていたのを憶えています。
大和和紀の『あさきゆめみし』や
高河ゆんの『アーシアン』『源氏』などのマンガも後に加わりました。
その中の一つだった日渡早紀の『ぼくの地球を守って』は
“前世”や“転生”という連載当時キャッチーだった(!)題材で描かれています。
わたしは姉の本棚の上段にあるそれらのマンガを読んで育ちました。
マンガ遍歴を見ていると姉は宝塚歌劇を通ってもよさそうなのに、
まったく興味を示しませんでした。
まわりの友だち、付き合う人も変わっていく高校時代、大学時代を経て
わたしの「カルチャー」は姉の文化圏から少しずつ離れ、
姉離れしていった気がします。

 

宝塚を好きになったのは社会人になってからですが、
広大な原野を歩きながら自分で開拓していく感覚が面白く
わたしは宝塚にすぐにのめり込みました。
立派な「ヅカオタ」となったそんな折、少女マンガを変えたとさえ言われる
記念碑的作品を宝塚が舞台化するという知らせが。

 

そう、『ポーの一族』です。

 

演出を担当するのは単行本1巻の巻末あとがきを担当しているほどの
「ポーの一族ファン」である小池修一郎。
彼はあまりにも『ポーの一族』が好きすぎて
似たような吸血鬼の物語をオマージュとして以前宝塚で舞台化しました。
念願かなって、彼自身の脚本と演出による
『ポーの一族』が来年元日に宝塚大劇場にて開幕、
2月から3月にかけては東京宝塚劇場にて上演されます。
わたしはこの一報を聞いたとき、
久しぶりに、実家で、姉と邂逅したような不思議な気持ちになりました。
幼き青春だった姉の本棚が目の前に立ち現れ、そこに立っているような、
部屋に差し込む陽の光の中で小さなほこりがゆっくり舞うのを見るような、
感傷的な気分でした。

 

姉と『ポーの一族』を観る幸運な日があるといいのですが、
今回は予定が合わなさそうで残念です。
でもいつか、一緒にDVDを観たいなと思います。
そして色あせた思い出の1ページを懐かしく繰ることができたら。

 

さて今年のトレース納めは、後輩をシメて角界を締め出されたこの人が登場。
なんとなくペンの陰影も薄くなってしまいました。
来年も、どうぞよろしくお願いします。