青春は永遠の回

芸術の秋です。
相変わらず宝塚ばかり観ているわたしですが、
先日、あるコンサートに行ってきました。

 

38歳の若さで亡くなった本田美奈子を偲ぶ
チャリティーコンサートです。
毎年行われているそうですが、初めて行きました。

 

そこで、松本伊代、早見優、森口博子、坂本冬美という
同世代の”アイドル”のおねえさまたちを目の当たりにし、
さらに、松本伊代の「センチメンタル・ジャーニー」や
森口博子の「Eternal Wind」、早見優の「夏色のナンシー」といった
うっすら聞いたことあるけどちゃんとは聞いたことない曲を
ご本人が歌うのを聴けて、すごく面白かったです。

 

なかでも、松本伊代親衛隊はピンク色のはっぴ、ピンクのハチマキで揃えて準備万端。
「ピンク…ピンク色…」というささやきがあちこちで聞こえます。
客席で注目の的でした。

 

松本伊代は休憩後の二部にだけ出てきたのですが、
親衛隊が野太い声で「いよちゃーーーん!!!」と叫び、ここは武道館か。

 

そして、前方席に陣取る謎のスーツ姿の男性たち。
伊代ちゃんの「センチメンタル・ジャーニー」の振りも完璧で、年季が入っていました。
誰のファンかはわからなかったのですが、
アップテンポの曲で率先して立ち上がるなど常連感プンプンです。

 

伊代ちゃんが歌い終わった直後に
ヒロミが「さらった張本人です」と登場して会場も大盛り上がり。
ママ、パパと呼び合う仲睦まじい夫婦漫才が展開し、
テレビを見ているような不思議な感覚になりました。

ふだん宝塚を観に行くと女子トイレが激戦なのですが、
この日は男子トイレが激混みで、それも新鮮な体験です。

 

テレビで見るよりずっと細くて、可愛くて、白い。
そう、森口博子です。
85年にリリースした7枚目のシングルがようやくヒットした彼女は、
本田美奈子と同期の85年組だそう。

 

伊東四朗の番組でアイドル対抗戦ゲームがあり、
パチンコ玉を誰が一番多くすくえるかレースでライバルとなった二人。
森口博子は、本田美奈子の番にずっと
「失敗しろ失敗しろ〜」と祈っていたけど失敗しなくて、
結局美奈子ちゃんが勝ったのよ〜という話で笑っていました。

 

「やっぱり美奈子ちゃんは持ってるんですね〜」
と穏やかに回収する先輩アイドル早見優。

 

わたしがちゃんとテレビをテレビとして認識して見始めた頃、
「アイドル」といえばモーニング娘。だったりしたので、
その場になっちこと安倍なつみがいることも、感慨深いものがありました。
びっくりするくらい小柄なんですよね。
ファンに向ける笑顔がキュートでした。

 

ゆーゆ&あずみという親子ユニットも出演していたのですが、
母あずみちゃんのアイドル感満載の動きに比べ、
娘ゆーゆちゃんが至極控えめだったことがツボでした。
ブリブリなあずみちゃん(母)ばっかり見ちゃったよね!?
ゆーゆちゃんにはもう自我があるのですこし照れがあるお年頃…

 

歩く粋こと坂本冬美が歌った「命をあげよう」という曲は、
本田美奈子が出演していた『ミス・サイゴン』というミュージカルから。
こぶしの効いたミュージカル曲は初めてだったので、
聴き入ってしまいました。
坂本冬美は声が柔らかくて、聴きやすくて、さすがでした。
前奏で響きわたる「ふゆみちゃーん!!」の熱い声援。
ご自身の新曲も披露し、もはや坂本冬美リサイタルです。

 

知念里奈は、最近はもっぱらミュージカル女優という認識なのですが、
やっぱりパフォーマンス力というか、表現力がちがいました。
歌手としての経験値と、舞台女優として培った聴かせる力。

 

わたしが好きな元宝塚花組トップ娘役の蘭乃はなさんも出ていて、
本田美奈子もよく歌っていたという「Time to say goodbye」をイタリア語で、
豊かで美しいソプラノで歌い上げ、次に心のこもった「新世界」を聴かせていました。

 

宝塚時代はどちらかと言うとダンサーとして名を馳せていた彼女ですが、
退団公演の『エリザベート』、
さらに退団後第一作目となった帝劇の『エリザベート』を経て、
堂々とした歌唱力に磨きがかり、素晴らしかったです。

 

アイドルはスポーツ選手のようなものだと思っていました。
現役でいられる時間は限られている、という意味であり、
その時間は人によってはとても短い、という意味です。

 

でも、現在の松本伊代、早見優、森口博子を見ていると、
あまりそう思いませんでした。
なぜなんでしょうか。

 

彼女たちはとても若々しかったから、ということもあります。
わたしはでも、ファンと彼女たちの関係がそうさせるのかなと思いました。

 

これは宝塚でも言えることですが、
自分が青春を捧げて追いかけた「アイドル」を、
結婚しても、子どもがいても、
自分の目の前にいるこの人はまぎれもなく「アイドル」だと思うなら、
その人は永遠にアイドルなのです。

 

ステージ上の彼女たちも、そうしたファンの視線や声援に応える。
アイドルとファンを結ぶ強い関係性が、あの場で一瞬にして生成され、渦巻きました。

 

青春時代に聴き続けた曲がかかれば、スイッチがONになる。
流れた月日は無効化される。
アイドルとファンの関係性は、永遠に形状記憶なのかもしれません。

 

よく焼けた上等なヒレ肉の断面を「羊羹みたい」と言った、
という伊代ママの天然☆エピソードにわく会場の中で、
わたしも自然と立ち上がって「One Way Generation」に合わせて
からだを揺らしていました。

 

1時間押しで終了したとあって体はぐったりしましたが、
「アイドルってやっぱすげえ」などと
陳腐な言葉をつぶやきながら会場を後にした秋の1日。

 

今は、伊代はまだ〜16だから〜♪を口ずさむ日々です。