異常な自己紹介あるいは情熱大陸(妄想)は3回を予定していますがそれが何か?  その1

まだ残暑の厳しい某日、取材は始まった。
今回われわれ情熱大陸班は、
ADBの綾◯はるかことビューティーシノハラに密着する。
綾◯はるかを名乗ってさらに「ビューティー」。
どんな社会人だ一体。

 

クルーは、ディレクター、カメラ、音声、照明の計4人。
適当にあいさつを交わし、早速取材。
まず、彼女の朝に密着した。
朝は、タイツ選びからはじまる。
タイツ→服、と全体のバランスを見る。
何色で行くんだ?
じっくり悩んだ挙句、彼女は意外にも黒を選んだ。
案外おとなし…ってなんだ!?あの斑点は!?

 

ドット柄だ。
それが彼女のやり方。
夏以外はタイツ。
それも彼女のやり方。

 

―なぜいつもタイツ?
―ある夜ね、真夜中に目が覚めたんですよ。明け方近かったですけど、神様っぽい人、じゃなくて神様っぽい神様が立ってたんです。枕元に。それで・・・

 

~夢再現中~
神様「モワモワ・・・(スモーク的な何か)」
わたし「ど、どうも」
神様「おめえ・・・」
わたし「は、はい」
神様「タイツ履け!」

 

―な、なるほど。お告げのようなものですか?
―ええ告げられましたね。ビビッときました

 

彼女とともに勤務先へ到着。
暑い。この交差点はたしか日本一暑い交差点じゃなかったか。
汗をぬぐいながらふと横を見ると、
取材クルーの誰よりも汗をかいているビューティー。
す、すごい汗。
ていうか歩いているだけでそんなに?
とりあえず「新陳代謝抜群のビューティー」という画は撮れた。
でも、

 

―必要なくね!?その画は!?
―え?

 

うお!何で!?ビビッたー!心のなかのポエム普通に声にでてた!
だ、だいじょうぶだ。聞こえてない。焦るな。
音声さんの咳払いが聞こえたけどセーフセーフ。
OKOK。取材続行。むしろ緊張ほぐれて絶好調。

 

社内風景をひととおり撮る。
山のような雑誌。どデカいプリンター。
ときどき観葉植物。ついでに亀。亀?

 

お昼時、彼女はデスクにはいない。
ボードには「おこめ」と一言。
意味があるのか不審に感じながら、
カメラさんは「おこめ」をクローズアップする。
カメラさん強面だしコワいYO!
これで「おこめ」の謎が解けなかったら・・・。
柔道二段の膝蹴り間違いないYO!

 

同僚に少し話を聞いてみるか。

 

―あの、すみません
―なにピヨ

 

人のよさそうな若者なのに。
何だ。何なんだピヨって。ピヨって何!?
流行ってるの!?ねづっち的な何かなの!?
おおお落ち着け。ととりあえず「おこめ」だ。

 

―この、おこめって?
―つまりお昼ごはんのことピヨ

 

なんだ昼飯か。よし、順調だ。順調だよな。
この際ピヨは忘れてもいい。いや忘れるべきだ。
カメラさんは彼女の机のまわりを撮る。

 

―机がかなり荒廃してますね
―ええ。でも今日はまだいいほうピヨ

 

いま聞こえたのは、彼女の同僚が発したピヨなのか、
カメラさんの血管がピキッといった音なのか。
確認する勇気はなかった。
ていうか怖くて
カメラさんのほうに顔向けられないんだって!

 

まるで何日か台風が居座ってここ暴風域だったんです、
とでも言いたげな彼女の机の上。
語尾がピヨ、の同僚。
謎はさらに深まったいや浅くなったのか。

 

今日の取材はまだ終わりそうになかった。
が、
カメラさんは落ち着きがなくなっていた。
「ピヨ」の不可解さが原因だ。
ものすごい鬼の形相で「即刻解散」を提案してきた。
カメラさんは今日撮った画を確認して、
後味の悪い負け方をしたボクサーのような顔つきになった。
こ、コワすぎる。ボクサーってより893・・・。
何人か殺しててもおかしくないYO!
でもカメラさんの気持ちもわかる。
だって、彼女のタイツエピソードと、滝のような汗と、
おこめの文字と、ピヨ社員しか撮っていないのだから。
これは、どう考えても最悪の結果だ。

 

われわれは嫌な汗をいっぱいかいて、1日目の取材を終えた。