生きてるものはいないの回

みなさんお久しぶりです。

 

都知事がやめたり、
宝塚で「戦国BASARA」舞台化が決まったり、
体重が純増していたり、
季節の移り変わりとともにたくさんのことがありました。

 

突然ですが、わたし
ゾンビとかゾンビ映画とか
幽霊とかホラー映画とか
はてはお化け屋敷とか怖い話とか
そういう一切のものを遮断して生きてます。

 

怖いから。

 

いったいなにが楽しくて
すすんで怖い思いをしなきゃいけないんでしょうか。
みんな頭ちょっとおかしいですね。
よっぽどMなんですね。
それに気づいてないんですね。

 

「そういえば昔ね・・・」って
こっちが怖いって言ってんのに右から左へ華麗にスルーして
怖い話をしだす輩を散見しますがホントやめてください。
「怖くないから」っていう枕詞で始まった話が怖くなかったためしないです。

このトレースするのにゾンビ画像検索したくなくて
ムンク画像の検索だけにとどまったわたしの気持ちを考えてくださいね。
(でもムンク画像の怖さも大概だった件)

 

怖い話を意気揚々とする人間が怖い。(会社員・女)

 

でもね、こないだ翻訳者に惹かれてある小説を買ってしまって、
それをなんとはなしに読みはじめたら、
ゾンビが出てきちゃったんですよね。

聞いてないよ!(白目)

 

こりゃまずいと思って、読みさそうかと思ったんですが、
おもしろいから読むのをとめられなくて、終いまで読んでしまいました。
話の途中ですが、この、「○○○(白目)」っていう表現、
面白いですよね。完全にマンガ的な表現。
『ベルサイユのばら』などの少女マンガに見られる
目が描かれていないあの表情がルーツじゃないかと思うんですが。
ちなみに来年、99周年を迎える宝塚では、
満を持して『ベルサイユのばら』の上演が決定しています。
ベルばらを笑う者、ベルばらに泣く!
ぜひ一度はごらんなさい♪ ごらんなさい♪ ベルサイユの・ばら♪

 

話に戻りますと、言っておきますがわたしは、
愛する宝塚の舞台で「幽霊」に類するものが出てくるだけで
内心ちょっとひやっとする極度のビビりなわけですね、
だからゾンビ小説なんて死んでも読みたくないわけですね。

 

なのに読んじゃいました。

 

で。

 

これまですべての「怖いもの」がものすごく怖い気がしてたんですけど、
ゾンビだけは大丈夫な気がしてきました。

 

べつにその小説がコミカルだったから、とか
小説のなかのゾンビがまぬけだったから、とか
そういうんじゃないんです。

 

わたしが遠巻きながら知っている「ゾンビ的なもの」そのものだったし、
だから不気味で、実際にいたら超怖いと思うし、
映画とかで絶対観たくないんですけど、
不思議なことにその小説のなかに出てくる「ゾンビ」は、大丈夫だった。

 

だから、読み終えたあとちょっと好きになってました。
なんだそれ。

 

少し、その小説の話をしましょう。
おそらくアメリカ、ある郊外のコンビニを営業してる青年と、その友人がいます。
2人は年が離れている。
ある女の人がいて、その人は犬の保健所につとめている。
コンビニの前を通りかかるときに、犬を乗せているんですが、
その犬の運命はもう決まってしまっている。

 

主要な人物はこの3人だけです。

 

コンビニは、ある裂け目の近くにあり、そこからゾンビが這い出してくる。
ゾンビはコンビニで買い物をします。

 

そんな話。

 

わたしの浅薄なゾンビ知識では、
ゾンビの風貌といえば『スリラー』のゾンビしかと思い浮かびませんが
たぶんああいう感じで合ってると思います。

 

よく「B級映画」というくくりのなかにゾンビ映画はランクインされます。
ただれた皮膚や原型をなくした顔は、ともすると
ハロウィーンの仮装くらいのパンチ力しかないのかもしれません。

 

「あのドンキに売ってるやつ」みたいな。

だから可笑しみがあって、愛らしいと感じることももしかしたらあるのかもしれない。
テレビから出てくる貞子よりはずっと愛嬌があるのかもしれない。

 

でもね、スリラーのPVさえわたしはちょっと夜中観たくないんですよ。
これほんとに。

 

なのにゾンビ小説を読むことになるとは思いませんでした。

 

この小説のなかでわたしがいちばん怖かったのは、
むしろ「パジャマ」の描写でした。
コンビニの実質的なオーナーである青年は、
売り物であるパジャマを着て店に立つのですが、
そのパジャマの描写の恐ろしさったらなかったです。
小説だけが表現できる、視覚的な怖さ。

 

作家の多和田葉子氏の言葉を借りれば、「魔は細部に宿る」ということ。
パジャマを描写する言葉の細部に、墓石のように冷たい手触りがしました。
体温を奪われて、それこそ自分がゾンビになってしまうようなあの世の感触・・・。

 

SF小説だと思って読み始めたらとんだゾンビ小説だったわけですが、
チキンハートなわたしでもじゅうぶん読めた本ですので、
読書の秋にゾンビってみてはいかがでしょうか。

 

『マジック・フォー・ビギナーズ』
ケリー・リンク (著)
柴田元幸(翻訳)