ビューティー署の異常な事件簿1 サラダの回

12月3日日中、都内某所のフードコートで、
男が「ゆでたまご入れ忘れ」の疑いで
ビューティー署によるビューティー的事情聴取を受けた。

 

男は、ある弁当売り場の店員に扮してお客の対応をしているところを、
巡回中だった同署のビューティーポリスに発見された。
まさに犯人は犯行現場に戻る、である。

 

ドランクドラゴン塚地じゃない方つまり鈴木似のその男は、
メガネをかけているにもかかわらず、
ある女性のテイクアウト品に「ゆでたまご」だけを入れ忘れた疑い。

 

その際、そのメガネひょっとして伊達では?という
確信犯的犯行の可能性が浮上したが、
そのメガネがさほどハイセンスではないことが鑑識結果から判明し、その線は消えた。

 

女性のテイクアウト品が、
「スピナッチ(ホウレンソウ)、きゅうり、にんじん、ゆでたまご、グリルベーコン」
という栄養バランスの考え抜かれたメニューであったこと、
同女性にとってランチが1日のモチベーションを左右するきわめて真摯な営みであること、
さらに男のそのような「うっかり」が初めてではないことなどを踏まえ、
同署はこの事件の社会的影響、重大性を重く見て、
ビューティー的業務上過失サラダ罪の適用を検討している。

 

同署からマスコミあてに公開された事件の概要は以下のとおりである。

 

12月3日、都内某所に勤める女性は、熟考の末、
「今日はサラダダダダダダーン!」と歌いながら、ひとりで昼食を買いに出かけた。
その日は前日から降り続いた雨がやみ、快晴が広がるすばらしい天気。
そう、このときまで同女性はまさかこのような事件に巻き込まれるとは、ゆめゆめ思わなかった。
女性は、以前にもライトな「うっかり」をしでかした
(その時の届け出は同署の記録にない)問題の男がその店にいるのを見て、
少しだけ不安になったと言う。

 

注文票に赤チェックを入れ、
そのオーダーどおりに完成されたモノを提供されるというシステム。
男に注文票を渡すと、男はめんどうくさそうにサラダを取りはじめた。
女性はなんとなく胸騒ぎの前兆のような軽い居心地の悪さを感じながら、
男の不器用な、そう言ってよければ少しイライラする粗雑な手つきを見ていた。

 

会計が済み、いざ会社へ戻ろうという時に、女性はある異変を感じた。
若干、稲川淳二調でその時の様子を語ったという。

 

「なんかねえ、帰り道急にねえ、おかしいと思ったんですよねえ。あれ、なんか変だな変だなーって。おかしいなおかしいなーって」

 

女性は、ビューティー的な虫の知らせにより事件をいち早くからだで察知していたのだ。

 

ない!

 

注文票のチェック欄にたしかに赤チェックを入れたトッピング「ゆでたまご」が!
不安的中!ひっくり返したり、凝視したり、裏表を再三チェックした上で、
その店にもんどり打ちながら引き返す女性。

 

その場で「ゆでたまご入ってる?」と問いただした女性に対し
男は当初シラを切るつもりで「ほげ?」的なとぼけ顔を見せていたが、
女性の睨みをきかせた目線に気づき、こちらを警戒しながらちいさな声で
「え?なにたまご?ゆでたまご?」とぶつぶつ言いながら、
もうすでにドレッシクングを混ぜ終えたサラダの上に、
バサッと無造作に「ゆでたまご」をトッピングした。

 

ドランクドラゴン塚地じゃない方つまり鈴木似の男は、
「すやせんしたー」という間の抜けた無感情な声で謝罪すると、
さっさと通常業務に戻っていった。

 

女性は、再発防止のためという強い正義感から、
即座に同署にビューティー通報したという。

 

男は、ビューティー的取り調べに非協力的な姿勢を崩しておらず、
「これっていつおわるんすか。ほげ」と1分ごとに聞いているらしい。

 

同署は、周辺の店、お客などの聞き込みなどを通じて、
男の余サラダ罪を追及する構えだ。