「もう、3時間飲んでるんだよ」

樹木希林さんについて、わたしは語ることばを持たないのですが、
富士フイルムのCMや、宝島社の広告をいまも覚えています。

すてきな方ばかり、今年は旅立たれてしまう気がします。

 

さて、今回は、夜の寿司屋。それも金曜。金の夜の寿司屋。

どうですか。酒の肴に、寿司。

 

座っているのは、ビジネスマンか、サラリーマンか。

スーツ姿の男性客に混じって、わたしは友人とカウンター席へ。

時計は夜の9時を回っていたでしょうか。

どこぞの高級腕時計をした酔いどれのおじさま上司と赤ら顔のその部下が、
若い大将をからかいながら陽気に話しています。

 

ここの寿司屋の大将はネクタイを締めるのですね。

素敵でした。

 

当然、お酒を頼むわけですが。

するとやはり、いい具合に出来上がった近くの上司O(おじさまの略)が、
「どうもどうも、ひとつ乾杯しましょう」と杯を上げるので、
こちらも、どうもどうも、と合わせました。

わたしの左隣だった部下Oは、
倒れたおちょこよろしく斜めになりながら、
とろんとした目で「かんぱ〜い」と。

 

さらに。

お皿に余っていたねぎトロの巻物を、「これ」と差し出してくる上司O。

一瞬、残り物かいと思いましたが、
まさか毒入りでもあるまいねと素直にいただき、
「おいしい〜」とうれしそうに伝えるだけの簡単なお仕事です!(怪しい求人広告)

巻物は、他人様のお皿からいただくのも割合気になりませんね。

でも、それもお酒が入っていたせいかもしれません。

何を話すでもなく、頬杖をつきながらちびちびとお酒を舐める上司Oと部下O。

その横で、握られた寿司を静かに胃に収めるわたしたち。

 

わたしは、夜の寿司屋はおろか、
居酒屋に頻繁に行く星の下には生まれなかったので、
こうして仕事終わりに寿司を食べ、酒を飲み交わし、
大将にちょっかいを出し、楽しそうに時間を過ごすOたちを見て、
どこか新鮮な気持ちでした。

もし、自分がOだったら、という考えがぼんやり浮かびます。

いろいろと気のいいことを言いながら、
隣に来た女性2人と乾杯したくなったりするのかな。

それもそれで、夜の寿司屋っぽい。

いやむしろ、それこそ夜の寿司屋。

 

深くコミュニケーションは取らなかったのですが、
夜の寿司屋に来るO三人組は、ただの、のっぺらぼうのOではなく、
それぞれに異なるでこぼこした人生を持っているのだなぁと思いました。

まぁべつに、だからと言って、
電車とかで肩に寄りかかってくる酔っ払いに優しくなったりはしないんですが。

 

「もう、3時間飲んでるんだよ。はははは」

 

上司Oの高笑いが響きます。

ここは「人間交差点、夜の寿司屋」。

72時間カメラがあってもおかしくないです。

 

わたし、ネタの中では玉子が大好きなんですが、
回らない寿司屋のカウンターで玉子を頼むのは

なんとなく「浅い」ような気がして、サンマにしました。

サンマ、美味しかった。

 

旬のものをいただき、ほろ酔い気分で(あるいは酩酊状態で)家路に着く。

世の中のOたちは、いろんな贅沢を知っているのだなぁと感心しました。

 

ごちそうさまでした。

 

と、最後を「ごちそうさまでした」で締めると

食べ◯グ感がでるのでオススメです☆


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